紫闇の玉座−3
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宋太傅は孫陵王を見送ると、残っていた十三姫たちを見る。
春麗の右手が懐に入っているのを見て、ふっと笑った
「いくらお前でも、孫陵王にあの扇一本では無理だ」
「わかっていますわ。でも、もし宋太傅が切り殺されそうになったら投げつけてやろうと思って」
と笑いながら懐から手を出す。
無意識に力を入れていたのか、少し白くなっている手を鳳珠がみて、そっと触れた。
宋太傅がふぅ、と大きく息をついた。
「お疲れになりました?」
「…いや…わしの時代はもう終わったのだな、と実感したまでだ。孫陵王は最後までわしを見ていなかった。年は十ばかりしか違わぬが、奴にとってはわしは過去だ。戦場に出ずにただ過ごす中で、いつの間にか老い、そして置いていかれた」
「そう…ですわね。戦はなくなり、三師と呼ばれる立場で、政治の前線にいらした訳でもないですものね」
容赦なく言う春麗に、鳳珠と十三姫は少し慌てた様子で見ているが、気にせず続けた。
「でもまだまだできることもありますわよ、宋太傅。それはわかっていらっしゃるでしょう?」
春麗は少し得意げな表情で首を傾げた。
宋がふっと笑って、春麗の頭をポンと叩いた。
「お前、剣は嫌いだというが、これからしばらくわしと手合わせせんかの?腕が鈍ると、守りたいものも守れなくなるぞ?」
チラリと鳳珠の方に視線を向ける。
春麗は、邵可も紅州に行ってしまったし…それも悪くないかと思い、
「…えぇ、構いませんわ。流石に、今日はいやですけど」
と答えて笑った。
十三姫が「私も混ぜてね!」と手をあげてから、パン!と勢いよく手を打った。
「さぁて、後片付けをしなくちゃね!ったく、どいつもこいつも勝手に後宮に乗り込んできやがって!ちょっとそこの宋太傅、感傷に浸ってないで手伝ってくださるわよね!?春麗ちゃんは私の名前で抗議文書いて!黄尚書は…えっと、することない!?あ、春麗ちゃんが抗議文書いている間、守ってあげてちょうだい!なんとなくあまり強そうに見えないけど…」
宋太傅、鳳珠、春麗は顔を見合わせ…一斉に吹き出した。
「わたくしたち、どちらの味方、でもないけれど…確かに後宮に王の許可なく踏み込むのはよくありませんわね。そういうことでしたら、わたくしやりますけれど、いいですか?」
「あぁ…だが、筆跡は大丈夫か?」
「ま、”誰が書いたか”はいいんじゃない?ちゃんと署名と押印して自分で持っていくから!あ、中身同じでいいから、二通書いてね!」
この”自分で持っていく”の意味を、この時は十三姫以外、まだ誰も知らない…