紫闇の玉座−2
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春麗は政事堂を出た足でそのまま後宮に向かう。
「ひどく疲れた顔をしているが大丈夫か?」
邵可は春麗を座らせ、百合が茶を出す。
「えぇ、色々あったので、手短に…叔母様、ありがとうございます」
と淹れてもらったお茶を飲みながら、ことの顛末を話す。
流石の内容に、皆おなじく眉を曇らせた。
「いつかはおこるべくことが、今晩起こったということだとは思いますけれど…主上は無事です。リオウ殿を連れて出られたので、もしかしたらこちらに連れてきているかもしれません」
「後で、私が見に行ってみるよ」
「叔母様、お願いします…羽羽様に、リオウ殿のことを、頼まれたんです…殺された日の、わたくしたちへの最期の言葉でした…」
その時のことを思い出し、春麗は瞳を閉じた。
「でも、何も、できなかったんです。何も…危ない、と思ったと同時に、仙洞官は宋太傅と孫尚書に斬って捨てられました。返り血もでないぐらいの電光石火で」
邵可は軽く春麗の頭を撫でながら「そうか…」と呟いた。
(春麗はおそらく、人が目の前で斬り殺されたのは初めて見ただろうな…)
邵可はそこへ思いを馳せた。
かつては、自分が息を吸うようにやっていた行為。
剣術を学んだとて、聞くと見るとは大違いだ。
そして、実際にそれをすることも。
邵可の思いを察して、春麗も黙って考える。
鳳珠の邸で賊を打ち倒していた時とは違う、リアルな血のにおい。
いつかあれを、自分がやらなければいけない日が来るのだろうか。
そして、それをしていた邵可は…
邵可と、そして春麗の思考が別の方向へ行っていたのを戻したのは百合だった。
「春麗は、外朝に戻るんでしょう?」
百合の問いに、力を入れて答える。
「えぇ、何も言わずにこちらに来てしまったので、一度…仕事が終わったら、もう一度顔を出してもいいのですが、その…」
「鳳珠さんと、一緒に来ればいいじゃない?この混乱だもの、大丈夫よ」
百合が助け舟を出した。
「そうだね。こんな時だから、春麗はできる限り鳳珠殿と一緒に行動したほうがいい。鳳珠殿が嫌だと言わなければ、来るなら一緒に来たほうが私も安心だよ。それに、君はだいぶ動揺しているし、色々際どい。以前のように一人で無茶をしないか、心配だから鳳珠殿にいてもらいたい」
「父様ったら…わかりました。聞いてみますわ」
春麗は戸部へ戻っていった。
「さて、少し、劉輝様の様子を見てこようかね?」
邵可は十三姫に促して、室を出た。