紫闇の玉座−2
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「羽羽を殺したことを正当化したお前を、俺は許さない。お前にはお前の考えがあるように、羽羽には羽羽の考えがあった。仙洞省は中立を持って信となす。決して玉座を左右することまかりならぬ。信念や意見はあっていい。不満があればいえばいい。だがな、最後の判断は陛下だ。陛下と、日々朝廷にて民と政事に向き合う百官たちの責務だ。同じ星を見たものがそれぞれの道を歩くように、最後に決めるのは人の意志だ。思い上がるな。この国の行く末を決めるのは星でも仙洞省でもない。ーーましてや貴様の薄汚い讒言ではない!」
刹那、木っ端微塵に木屑が割れるような音がして、リオウが吹っ飛ばされ、劉輝が受け止めた。
仙洞官を見れば木の枷が真っ二つに割れていて、武官二人も蹴り飛ばされて後方へ飛んでいた。
押し寄せる武官たちよりも早く、仙洞官はたった一歩で劉輝とリオウの目前まで跳躍した。
折れた槍の上半分を途中で拾うと、劉輝に突きつけた。
「人の意思が決めるのなら、そこには僕の意志も入っている。その王には、王の徳も星もない。僕は認めない。排除する。何が悪い?その王に王の星はない!ーー僕は正しい」
槍を超人的な力で振り下ろす。
だが槍は振り切られなかった。
槍を持った腕が、そのままゴトリと落ちた。
「あれ?」と仙洞官は首を傾げた。
一拍おいて、床に転がり落ちた自分の腕を見た。
ついで、心臓から剣が生えた。
まるで人間ではなく獣を素早く仕留めるように。
ちゃき、と鞘が擦れる音がした。
劉輝はその二人を見上げた。
目にも止まらぬ電光石火で全てを終わらせていた。
「宋将軍…と孫、陵王?」
「…御前で抜刀し、申し訳ありませんな、主上。お許しを」
孫陵王はちょっと笑うと、床に剣を置いた。
帯剣は許されておらず、近くの武官からふんだくったらしい安い剣だった。
「腕はいささかも落ちとらんな、孫陵王。陛下を守ってくれたこと、礼を言う」
「いいえ」
「ご無事で、何より」
宋太傅が膝をつき、劉輝は頷いた。
リオウを抱え、政事堂を出る。
仙洞官の声が染み付いていくように、死骸の血が広がっていった