紫闇の玉座−2
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仙洞省令尹羽羽暗殺の一報は、瞬く間に朝廷を駆け巡った。
春麗は真っ青な顔をして立ち尽くす。
ぐらりと揺れる身体を、鳳珠が支えた。
「わたくしたちがあの場を去らなかったら…」
ガタガタ震える春麗に、鳳珠は言葉を選びながら口を開く。
「いや…羽羽殿のことだ。縹家の最高術者だったと聞く。ご自身がそうなることもわかっていらしたのではないか?だとすれば、あの場にいたとて、数刻後には同じことになっていたかもしれん。お前の、私たちの、そしてリオウのせいではない」
背中をさすりながら座らせる。
「それよりも…不味いな、王の後ろ盾だった羽羽殿がいなくなったとなると、いくらリオウがいてもまだ若い。きな臭い動きが一気に広がるな」
鳳珠の言葉にはっと春麗が顔を上げる。
羽羽の死で、ギリギリで保っていた最後の綱が、プツリと切れたようだった。
事実、それからの朝廷はー高官から下級官吏まで、”きな臭い動き”の話で持ちきりだった。
「ここまで動揺が広がってしまうと不味いですね」
柚梨が不安そうな表情をしながら戸部に入ってきた。
「かなり騒ぎになっています。おそらく…私兵を動かしている者もいるかと。公子争いの時のようにならないといいのですが…」
鳳珠は立ち上がり、戸部官を集めた。
「状況は皆知っての通りだ。朝廷の中でいますぐ何かコトが起こるとは考えにくいが、特に朝早くと遅い時間は一人で出ないように気をつけてくれ。何かあったらすぐに必ず私に報告するように」
礼部でも、魯尚書が礼部官を集めて、同様の話をーさらに踏み込んでした。
「紅侍郎は戸部との兼務で不在がちだが、心配はしなくていい。もし何かあったら、私か紅侍郎に相談するように。今のところ朝議ではあまり大きな動きはないが、何かあればこちらからもできる限りは共有する」
黒い影は刻一刻と近づいているようだった