紫闇の玉座−1
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「私では…その不安を完全に取り除いてやることができないのか…?」
ややあって鳳珠の少し沈んだ声が聞こえ、春麗ははっと顔を上げた。
「そんなこと…ありません…そんなこと、おっしゃらないで…鳳珠様がいてくださらなかったら、わたくし…」
(どうなっていたのかしら?)
想像もつかない。
もし秀麗に引っ張られる形で官吏をしていたら、きっと色々知りたくて自ら縹家に向かっていた。
官吏になっていなかったとしたら、秀麗を守るためにと言って、やはり縹家に向かっていたか…いや、昔の自分なら、それ以前にもっと暴走していただろう。
だが、それは想像でしかない。
今は鳳珠が止めてくれるおかげで、そして鳳珠のを支えたいがために、自制している。
茶州の時もそうだったが、全身全霊をかけて走り回る秀麗と異なり、力を持っているにもかかわらず何もしない自分は、やはり卑怯なのかもしれない…
膝の上で手をグッと握り締める。
ぐちゃぐちゃと思考か渦巻く
なんだかとても自分勝手で卑怯で情けなく感じ、じわりと涙が浮かんで、ポタポタと手の上に落ちた。
いつの間にか鳳珠が隣に来ていた。
手を取られたことで顔を上げると、もう片方の手で涙を拭われてから、そっと抱きしめられる。
「いつも言っているだろう、春麗の不安は、私に渡してしまえ。大丈夫だ、私が守る…」
「ほう、じゅ、様…」
「私たちは…互いが抱えられないものを、お互い持ち合って生きていくんだ、そうだろう?私の思いも春麗がもってくれた。今日の春麗の不安は、私が預かろう」
宥めるように背中を撫でながら諭す鳳珠に、肯定の代わりに身体の力を抜いてもたれかかった。
それでいい、と鳳珠は小さくつぶやいて、もう一度春麗の背中を撫でた。