紫闇の玉座−1
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邸で仕事をしていると、気配を感じたので外に出る。
影から小さな文を渡された。
お仕事室の席に戻って開くと、本家にいる叔父の玖琅の妻・紅九華からの文だった。
少し前に劉志美がきて黎深に会ったことと、旺季と秀麗が紅州に来たことが書かれていた。
(最後に様子を見たのは旺長官が紅州に入る手前だったはず…あれから少し日が経っているわね)
「…ほぅ…」
鳳珠に声をかけようとした春麗は、途中で止めた。
それに気がついて、鳳珠が「どうした?」と顔を上げて見つめてくる。
(いや、今はやめよう)
「いえ…なんでもありません…」
もう一度窓辺に立ち、紅の扇を広げてボソボソと話す
見るのが手っ取り早い。だけど裏付けが必要だ。
(できるだけ正確な情報を速やかに)
影に指示した内容をもう一度心の中で呟いてから、鳳珠に明日、羽羽のところへ行く許可をとる。
「最近、色々持ってよく行っているな。もしやお加減が相当良くないのか?」
鳳珠の問いに、春麗は黙って頷く。
「そうか…私も一緒に行っていいだろうか?」
「もちろん構いませんわ。でも…何かお聞きになりたいことでも?」
「いや…そういうわけではないのだが…お加減が良くないと言いつつ、春麗が出入りできるぐらいなのだろう?いつも何か持っていっているようだったから、気になっていたのだ」
「えぇ…お薬などは羽羽様の方がご専門ですから、お茶とかお菓子とか…お身体の負担にならなさそうで栄養がつきそうなものを。おそらく、あまり召し上がってくださってはいないと思いますけれど、今はリオウ殿も傍にいないですし…というのは、言い訳かもしれませんね…悠舜様のところへ足を運ぶ高官と変わらないのかもしれません」
春麗は取り繕おうとしたが…やめた。
最後の一言に、鳳珠の表情が少し険しくなる。
「縹家のことはよくわかりませんから…知りたくなってしまうのは…秀麗が行っていた、というのもありますが、それだけではなく…”目に見えていない部分”を知りたくなってしまうのかもしれません。何も知らなければ、そこまで聞きに行かなかったと思います…」
まとまらない考えをなんとかまとめて口から出してみる。
言いながら、顔は俯いていった。
(あぁそうだわ、なまじ”見て”しまうから、”見えていない”ことに対して不安が大きくなるんだわ…)
春麗はそこに思い当たって、唇を引き結んだ。