紫闇の玉座−1
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あぁうめえ、と言いながら酒を飲んでから、先ほどより少し砕けた様子で、また飛翔は話し始めた。
「むずかしーが確固たる信念があって理論で判断する俊臣や、家のしがらみのない俺はいいが、彩七家の直系のしがらみが実家にもヨメにもある鳳珠は、よりその選択が難しいだろうと思ったから、俺の考えは伝えておこうと思ってよ。黎深や悠舜がダチなように、鳳珠、お前も俺の大切なダチだからな」
”大切なダチだからな”の言葉に、鳳珠は瞳を閉じた。
その様子を目の端で認めた春麗は、ゆっくりと鳳珠のその表情を見て、安心したように息を吐きながら微笑んだ。
「何も、今すぐ答えを出せというわけじゃないぜ。ただ…”その時”が確実に近づいているのは、お前らもわかっているだろう?」
鳳珠は目を開き、真っ直ぐ飛翔を見て頷いた。
「飛翔…私は…黎深とは異なる形で、友として悠舜を選んだ。疑うことは何もない。だから、最後まで悠舜についていく、というところはお前と一緒だ…だが…」
言いにくそうに、一度切ってから酒に手を伸ばし、意気込むように煽ってから続けた
「だが、悠舜が王を見限るということもあるのではないか?私は…そうなったときに、盲目的に悠舜についていくという選択は何か違うと思うし、かといって一度言ってしまったからといって、そのまま王についているのもまた違うと思っている」
飛翔はちょっと面白そうな顔をして、鳳珠を見ている。
鳳珠は、驚いて目を見開いていた春麗の方を見てから、もう一度、顔を飛翔に向けた。
「飛翔、お前だからーー友であるお前だがら言うが、ここで争いが起きたら、公子争いの時と同じように、被害に遭うのは民だ。それだけは官吏として避けなければいけないと考えている。だから私は…もちろん私も最後まで悠舜の味方ではいるが、最終的には戦にならない方を選択したい。黄家と反してでも、だ」
厳しい表情で鳳珠が飛翔を見つめた。
口にした言葉の意味ーー”戦商人”である黄家と反対の立場をとっても揺るがないものがある、という鳳珠の心を、飛翔は下手な解釈なしに素直に受け取った。
「確かに、な…それも一つの考えだし、戦になれば国は荒れるし食物も…今以上になくなって、皺寄せは民にいく。俺の白州やそれから黒州のことももちろんだが、やはり民のことを考えると、戦だけは避けねーとな」
飛翔が頷きながら答えたのを、肯定の証と受け取り、鳳珠は少しホッとしたような表情になった。
「それにもう一つ、私には何に変えても…自分の命に変えても、守りたいものがある。民のことに加えて、最終的に、そこに手を出されなければどちらの可能性もあると思っている。卑怯かもしれないが、絶対に譲れない一線だ。」
鳳珠は隣に座る春麗の髪を一と撫でする。
「えぇ」
「だから、見誤らないように、最後まで見届けなければいけない…何が悠舜のためになるか、も含めてだ」
鳳珠がキッパリと言い切ったのを見て、飛翔はふっと笑った。
「わかった。そうだな、俺たちはちゃんと最後まで見届けて…判断する必要がありそうだな。だが、俺の考えはさっきの通りだ。覚えておいてくれ」
ほとんどあいた酒瓶を持って立ち上がった飛翔は、鳳珠の「わかった」という言葉を背に受けて、そのまま出ていった。