黄金の約束−1
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謝り倒して許してもらったらしく、しばらくしてからげっそりした絳攸が室から出てきた。
ここからまた吏部に向かって歩き回るのはごめんだ。
「待っている間に、通りすがりの方に吏部への道を確認しておきましたからさっさといきましょう」
「そ、そうか…」
「李侍郎がお邸の中でも迷子になると知っていますからね」
「う…」
ガクッと項垂れた絳攸の前に立って、春麗は確認をした。
「ところで、なんで戸部から吏部に鞍替えになったか聞かせていただきたいんですけれど?」
「…昨日、帰ったらあの人から”春麗は吏部によこせ”とつめよられた…」
「まぁ、どっちか一人、となったら、秀麗に名乗ってない以上、わたくしになりますわね」
仕方ない、とため息をつく。
「それから、”条件”についてですが、近いうちに主上に会わせてください」
「主上に?なぜ?」
「折り入って、お話ししたいことがございます。今は言えません」
・・・
少し絳攸は考えてから、「午に吏部に迎えに行く、時間を取ろう」と言った。
程なく、吏部について、絳攸が挨拶してから尚書室に入る。
扉を閉めた音で、脱兎のごとく紅い人が突進してきて、侍童を抱きしめた。
「春麗!よく来たね!!」
「く、苦しいです…はな、して…」
「あ、ああ、ごめん」
「”天寿”と申します。よろしくお願いいたします」
侍童の礼で完璧にお辞儀をする。
うむ、と頷いている黎深の横で、絳攸が驚いた顔をしていた。
「李侍郎、ここでは僕は天寿”です。”秀”もそうですが、くれぐれもお間違いのないように」
「そうだぞ絳攸、”天寿”だからな」
なぜか慣れた風に黎深も言う。
(何かおかしい)と思いながらも、養い親に直接聞くこともできず、「午に一度くる」と言って尚書室を出た。
「天寿、また一緒にいられるから嬉しいよ」
「それを天寿宛に言われると、なんだかフクザツですね…紅尚書。いえ、黎深叔父様…この仕事の山はなんなんですか!!せっかくおじさまとまたお茶ができると思っていたのに、これじゃあ無理ですね」
がっかり、を大袈裟に装い、肩を落として背中を向ける。
「あ、こんなの、すぐやるよ、すぐ!午には終わらせるから、午後は府庫で兄上とお茶をしよう!」
いつぞやの会話の再来となったが、
「しっかりお願いしますよ。今朝、行き先が吏部に変更になったと聞いた時から、叔父様とお茶をするのを楽しみにしていたんですからね!」
とハッパをかけると、黎深は机に座りものすごい勢いで処理を進めていった。