紫闇の玉座−1
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皿の中の采が大方片付いたところで、「お酒にでもしますか?」と春麗が用意してから、片付けに庖厨へ向かった。
邵可は少し口をつけならが
「いつもこんな感じなんですか?」
と鳳珠に尋ねる。
「こんな感じ、とは?」
「仕事の話がほとんどで」
ふと鳳珠は考えて、それから苦笑いした
「そうですね…あまりにも色々起こりすぎてますし、春麗も何かと気になるようで、つい…私はあまり気の利いた話ができる方でもないので…その…つまらない思いをさせているかもしれませんね…」
ちょっと寂しそうに、でも素直に謝ってきた鳳珠に、邵可は笑いながら答える
「いえ、そういうつもりで言ったわけでは…春麗と、あなたらしいと思ったまでですよ。秀麗は想像がついてましたが、春麗がここまで官吏が合っていたのは意外でした。最も、いつだったか聞いたら、鳳珠殿のために、と思って動いているだけだと本人は言ってましたけどね」
「……」
「あの子から、あなたについて行くと明言されています。だから紅家当主として主上に膝をついたときに、一人外しました。周りはそうは見なかったとしても、紅姓官吏で知っているものには薄々わかっていたと思いますし、彼女だけ特別扱いをして、彼女の選択を尊重したまでのことです。逆に、あなたについて行かないで紅家に従う、と言ったら、それも受け入れるつもりでいます。その時は二度と出すことはしませんけどね」
「それは、もっともだと思います」
鳳珠は間髪入れずに答えた。
何度も春麗から言われていたが、自分の想いに彼女を巻き込むことをなかなか受け止めきれていなかったのだ。
「あの子を切り離したのは…明言されたこともありますけれど、私なりの罪滅ぼしでもあるんです。私が当主になったからできたことです。ですから、あの子のためにも…そろそろ迷いの雲を晴らしてくださいね」
鳳珠ははっと顔を上げて邵可をしばらく見つめた。
府庫の主人の時とも違う、また紅家当主の顔とも少し違う、父親の表情で鳳珠を見ていた。
「ありがとうございます、お義父上…」
思わずそう言って、鳳珠は頭を下げた。
すっきりとした表情で顔を上げたのを見て、邵可は柔らかく微笑んだ。
その様子を、春麗が影からこっそり微笑みながら見つめていた。