紫闇の玉座−1
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鳳珠が迎えにきた。
「父様が一人だとかわいそうだから、今日は三人でこちらで食べてもいいですか?お邸の方には今朝の時点で伝えてしまったし、簡単なものしかできなかったのですけど…」
一拍驚いた鳳珠だったが「わかった、邵可殿、お邪魔します」と言って中に入った。
春麗は楽しそうに二人にあれこれと世話を焼きながら、少しずつ食べている
「少し食が細くなってないか?」
鳳珠が心配そうにみるが
「動いて疲れちゃったんですよ」
と笑って答えた。
「動くならしっかり食べないといけないだろう?」
ひょいひょいと春麗の皿に采を乗せて置く様子を、邵可が目を細めてみている。
「鳳珠様、もうこのぐらいで…ところで、そろそろ旺季殿一行は州境まで行っているようです。かなりの速度で夜駆をして移動していますね。羽林軍の精鋭軍でも、かなりきついんじゃないでしょうか?輜重隊は切り離して碧州へ向かったようです。」
「紅州に持っていっったんじゃなかったのか?」
邵可は少し驚いた顔で言った。
鳳珠は朝議でのやりとりを思い出しながら答える。
「もしかしたら…欧陽玉に食糧をなんとかする、と言ったのを実行したのかもしれない」
「確かに、言質取ってましたよね、玉様。だとしたら、紅州の食糧は…あ、もしかして、鳳珠様が前に仰っていた、劉州牧なら井戸の底に埋めかねない、ってあれでしょうか?」
「かも、しれん。それを旺季殿が知っている可能性はあるな。志美は公子争いの時、彼の軍にいたと聞く。一兵卒のことを知っているか…わからないが、その後の志美からそのことを知っているかもしれないしな。だがそれ以上に…」
鳳珠が采を咀嚼してから、思い返しながら話す。
「今回の動きで、彼が紅州と碧州を手中に収める、ということになるな…」
鳳珠の漏らした一言で、邵可は厳しい顔つきになった。
「この件、もしやもっと早くなんとかできたのではないか…いや、なんとかしなかったのか?」
自分で無意識に呟いた一言に驚いて、鳳珠はハッとしてから眉間に皺を寄せた。
春麗はここでよからぬ会話になるのを避けようとー悠舜に話が及べば鳳麟の話を避けられないとー、それとなく話題の仕向け先を変える。
「父様が移動された時よりは遅いですけど、相当な速度です。後ろに羽林軍が控えていますが、ついていけない人たちもいるんじゃないでしょうか。静蘭の動きが心配ですけれど、皐武官…以前、羽林軍に襲われた時に、藍将軍と助けてくれた方です。彼がついているのでなんとか抑えられる気がしますわ。わたくしと変わらないぐらいの年齢ですけど、軍の中ではかなりしっかりしてます。旺長官は静蘭の意志には気がついているでしょうね。ある意味分かり易いですから…何もしないといいんですけど」
邵可は聞きながら静蘭を思い、どちらにしても眉間に皺を寄せた。