紫闇の玉座−1
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「正直、春麗がここまでできるとは思わなかったよ」
「もっと早くに父様に話して、稽古をつけてもらうべきでしたわ」
定時後、帰りに寄った紅家貴陽別邸で剣の稽古の後、采の用意をしながら話をする。
邵可は手伝うことはないので、横で茶を飲んで話し相手になっていた。
鳳珠が迎えに来るために、その前に稽古は終わらせておかないといけなかったのだ。
「ところで、鳳珠殿にはなんと言ってあるんだい?」
「流石に父様に習う、とも言えないので、”紅家の伝手でいい先生を紹介してもらった”と言ってますわ。最も、自ら戦う気はさらさらなくて、防衛のためとはわかっているので、渋ってましたけれど最終的には了解いただけて。鳳珠様も剣は嗜み程度にしかなさらないようですけれど、気功の達人なんですよ。瑞蘭…あぁ、お邸の侍女頭なんですけど、彼女の話によると、どうやら最近またこっそり修練されているようで」
「へぇ、そんな特技があったんだね。春麗は鳳珠殿が修練されているところは見たことないのかい?」
「えぇ、お邸でもずーっと仕事されているのに、一体いつの間にそんな時間があるのやら、って感じよ。お時間の使い方が上手なんでしょうね?見せて欲しいってお願いしたんですけど、地味だから見ても楽しくないと断られてしまいましたわ。教えていただこうかと思ったのに」
ちょっとしょんぼりした春麗に
「まあ、鳳珠殿の気持ちもわからないでもないけどね。男はサラッとできた方が格好がつくと思う生き物なんだよ。春麗にはいいところを見せたいんだろうね」
と答えながらずずっとお茶を飲む様子は、かつての府庫の主人の姿そのままで、黒狼はもちろん、紅家当主にさえ見えなくて、春麗は小さく笑った。
「秀麗は、鉄のありか、見つけらたかしら…?」
「春麗も気がついていたんだね」
「えぇ、戸部で担当しているのでね…嫌な予感がして、相談して調べていただいたの。どこにいったかまではわからなかったけれど…」
「そうか」
「ところで、静蘭が旺季殿についていったそうですね?父様はどうしてか知っている?」
春麗は気になっていたことを邵可に聞いてみた。
邵可は軽く首を振って答えた
「いや、どうしてか、は知らないよ。でももしかしたら、旺季殿の動きが気になったのかもしれないね。絳攸殿ともよく話しているみたいだから、劉輝様のことが心配になったのかもしれない」
「やはりもう…戦は避けられないのかしら?」
「あの晩、孫尚書は”譲らせる”と言ってたね。劉輝様が譲らなかったら…避けられないのかもしれない」
春麗はキュッと手を握り、身体に力を入れてから、小さく息をついた。