蒼き迷宮−2
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数日後の真夜中。
劉輝と”最後の会話”をした旺季は、一つ深呼吸をした後、歩き始めた。
頭の中で、紅州へ行ってからの動きを予測し、組み立てながら歩いていると、程なく歩いた所に、黄鳳珠と紅春麗が立っていた。
眉間に皺を寄せて立ち止まると、きちんと上官に対する礼をとってから、春麗が口を開いた。
「音色に惹かれてこちらまで歩いておりました。先ほどのは、琴の琴ですね?」
「あぁ…二人は、どこから?」
「こちらに着く頃に拙い手になり、それから子守唄のような柔らかい曲を…」
「そうか…話し声は聞こえたか?」
旺季が鳳珠を見ると、「内容までは聞こえませんでした」と答えた。
ただそれは、誰と話していたかはわかったことを伝えたことになった。
そうか、と旺季は小さく答えてから
「仮面を外してくれ、黄尚書」
と頼んできた。
「…」
鳳珠は少し無言で何か考えた後、言われた通りに外した。
旺季は「進士の頃以来だな」と言いながら真っ直ぐ鳳珠の顔を見る。
「私はね、これまで必死にやってきた。時には家族を…大切な娘を、最愛の人から切り離しても…この国のためにやってきた。嫌いなものが山積みのこの国から、それを一つずつ減らすために仕事をし、見たい世界を見るために、必死になって。」
旺季は鳳珠を、ついで春麗を見る
「いまの六部尚書侍郎に、その覚悟があるか?今の王に…それができるか?」
「………」
「好きなものだけに囲まれて心地よく生きている。嫌いなものはーーなかったことに、いなかったことにする。それはどれほど危ういことか。王は万民を肩に負っている。一度の誤りが惨事を招くこともある。その時後悔するのでは遅い。だから、私は今の王とは相容れないのだ。好んで争いを起こしたいわけではない」
旺季は少し間を置いてから、鳳珠の方を向いて告げた。
「貴殿ならわかると思って告げたまでだ。よく…考えることだな」
鳳珠と、それに合わせて春麗が無言のまま目礼したのを見て、旺季はそのまま、再び歩き始める。
顔を上げその後ろ姿を見送る鳳珠は何を思っているのか…春麗にはすぐにはわからなかった。