蒼き迷宮−2
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
兵部尚書・孫陵王は旺季を送っていた凌晏樹を体よく追い払った後、少ししてから木立の影を見る。
「…出てきたらどうだ?実に見事なモンだが、この距離だと俺のが上だ。迅から貴公の話は聞いている。隠れても無意味だ…つかな、礼ぐらい、顔見て言わせろ、紅邵可」
「…孫陵王殿、あなたが若い頃、戩華王と司馬将軍と宋将軍の三人同時に相手取って、互角に渡り合ってたっていう昔話、今の今まで鼻で笑い飛ばして、全然信じてなくてすみません。何十年も行方不明のままの黒門孫家の”剣聖”がこんなところで文官しているとは思わなくて」
「は?ナニ”剣聖”って。俺はタダの一般庶民、黒門孫姓とは無関係デース」
「タダの一般庶民に私の気配がばれるわけがないです。こっそり帰るつもりだったのに」
旺季が気になって様子を見にきた邵可。
話のついでだ、とばかりに孫陵王は聞く。
「なぁ紅邵可。どうしてあの坊ちゃんに膝をついた?」
「私が劉輝陛下に紅一族の家紋と忠誠を捧げたのが、気に入りませんか?」
「と言うより、単純に不思議なんだよ。それにお前、一人だけ王に忠誠を誓う紅家から外しただろう?あれ、紅春麗だろ?勘当でもしたのか?」
そう、陵王は”王に膝をついた”ことと同じぐらい、”一人を除いて”と言ったことが気になっていた。
邵可は「あぁ、そっちも…」と小さく呟いてから、答えた。
「まぁ一人は…それでいいんですよ。あぁ、勘当したとかそんな些細な話ではありません。彼女に関しては…そうですね、私は個人的なツケを払っているのです。あの子は間違いなく、今はまだ王が王にふさわしくない、と思っています。それにあまり期待もしていないでしょうね。そして、私も劉輝様が王にふさわしいと考えて、膝をついたわけではありません。そんな気がする程度」
どこか他人行儀に話す邵可を、陵王は不思議そうに眺めた。
「だ、そうだぞ紅春麗?」
木の上を見ながら、陵王が言った。
邵可が陵王の目線を追うと、上からシュタッと春麗が降りてきて、陵王に礼をとった。
「どうしてお前までここに来たんだ?」
「さぁ…なんとなく、ですわ」
(あわよくば旺季殿と話せるかと思ったけれど…流石にそうはいかなかったわね)
春麗はクスリと笑って、陵王を、続いて邵可を見た。