蒼き迷宮−2
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上司の鳳珠は驚いたように副官をみる。
軍関係で口を挟むのは柚梨にしては珍しいことだった。
「…必要なことはわかります。ただ、懸念があります。兵馬の権は現状、旺季殿がもっておられますよね。この上、近衛大将軍まで陛下のお側を離れるのはいかがかと思います」
(柚梨様…)
春麗、そして鳳珠と魯尚書も少し心配そうに柚梨を見つめていると、それまで黙りっぱなしだった凌晏樹が、初めてやんわりと口を開いた
「おやおや…景侍郎は何を懸念されておられるのでしょう?聞きようによっては、うちの上司に対して大変失礼なことを勘繰っておられるように見受けられますが?」
柚梨は口をひき結ぶと、肚を決めた。
自分のうちは大して名門でもない。
失うのは職ぐらい、愛する妻子と貧乏しても構わない…いや、これから官吏になろうとしている、春麗と一緒に働ける日を夢見ている玉蓮の道を絶ってしまうことになるかも知れないが…
でもやる。
「ーー不思議なことをおっしゃいますね。凌黄門侍郎。あなたこそ、余計な何かを勘繰っておられるような物言いに見受けられますが」
瞬間、ゾッとするような沈黙が落ちた。
誰もが凍りついた。
景柚梨が、あの凌晏樹に喧嘩を売った。
今までそれをしてきた官吏がどういう末路を辿ったか、知らないはずないのに。
孫陵王も、この時ばかりは肝を冷やした。
まさかあの地味にコツコツ頑張ってきた景柚梨がー黄奇人や管飛翔ではなくー彼が、凌晏樹にメンチ切るとは思わなかった。
「…では景侍郎は、碧州の民を見殺しにしろ、と?」
「そんなことは言っていません。それが最善なら、最終的に羽林軍や大将軍を碧州に派遣することに反対するつもりもありません。ただ本来近衛軍は王直属であり、御身を守る為の最後の砦です。ーー陛下を守る最重要人物をお側から引き離すことに対して、この場の誰一人として懸念を言い出さないことの方が、遥かにおかしいと思いますね」
淀みなく、キッパリと言い切ってみせた。
魯尚書初め幾人かは手を上げて賛意を示したが、それはごくわずかだった。
意見を聞かれた劉輝は、悠舜に任せると言った。
尚書令が、言い分は大変尤もだが、とした上で、今回は孫尚書の意見を取ります、と明言した。
こういうことは第一陣で決まること、ハッタリは大きい方がいいことを理由として挙げた
王が”任せる”といった以上、それは誰にも覆せぬ命令と同じだった。
(悠舜殿の言い分も、もっともでもある…)
柚梨はもう反対はしなかった。