蒼き迷宮−2
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「本来、出身地域の州牧着任は特例でなければ認められませんが、火急時です。地理に明るければ、災害対策にも有利。御史台と吏部にはこの場で特別措置を求めます」
(この顔ぶれなら直ぐに決裁が取れる。正直、絳攸兄様たちが補佐をしていた時と違い、悠舜様が尚書令になられて、王が無視してきた旺季殿の資質を、王の無能さと影絵のようにくっきり浮かび上がらせたわ)
春麗はふと気になって横を向いた。
柚梨がその視線に気がついて目を向けてくる。
驚いた表情をしていたが、同時に納得した顔もしていた。
(同じことを思っているかもしれない…)
ほんの少し口角を上げてから、正面に向き直る。
欧陽玉は黙って装飾品を外し出した。
そして、承諾した。
もとより、自分が行くつもりだったからだがー
吏部侍郎と御史大夫がすぐに認め、尚書・侍郎の決裁も過半数を超えたため、玉が碧州へ向かうこととなった。
玉はすぐに中央軍の派遣を要請した。
一刻も早く寸断された輸送路を確保するためだ。
だが、若い欧陽玉の要請にいささかながら非難がもれた。
「茶州の疫病の時に、紅秀麗が中央医官の護衛に羽林軍を使いっ走りにしたはずですが?すでにパシリの前例はできています。なのに、あの小娘は良くて、この私が許されないどんなわけがあると?」
(玉様…やはり普段温厚そうに見える方ほどキレるとこうなるのね…キレ方が珀明さんに似ている気がするわ)
上司の飛翔や旧友の楊修が目を逸らす中、春麗はチラリと横を見る。
「文句はないですね。当然です。では一軍借ります。すぐにでも碧州へ先行してもらいます。私の指示に完璧に従い、私が不在でもやるべきことを心得て、常に規律正しく美しく、整然と隅々まで綱紀が行き届き、いかなる事態でも不届きな行いをせず、なおかつ碧州に名の知れているような今をときめく絶美の名将コミで一軍、耳を揃えて出してください、孫尚書」
「…ちょお待てや、玉ちゃん」
「誰がタマちゃんです、近所の猫じゃないんですよ。この私をタマちゃん呼ばわりしておいて、まさか無理とは仰らないでしょうね。、孫尚書」
「ーー美しさはなくていいだろう?」
「あったほうがいいです。タマちゃん代は高くつくんです」
「悪かったよ!それに美しー軍なんて多分異様だぞ?なくてもいいなら、考える」
玉は小さく舌打ちした。
「美しさ以外全部、ですよ?多けりゃいいってもんじゃないですよ?」
「ああ、少数精鋭は俺も賛成だ。今の碧州軍は混乱しているはずだ。そいつらを一括して残らず指揮下における器量の名将と、”どんな時も規律正しい”精鋭軍じゃねぇと、逆効果だ。お前の足を引っ張るだけだ。必要だから言ってんだろ、わかってるよ」
孫陵王はふっと悠舜を探る目つきで見つめた
「…美しさがなくていいなら、残らず耳を揃えて出せる案はある。近衛羽林軍。大将軍白雷炎か黒耀世に少数の手勢を率いて碧州へ先行。行くだけでも覿面の鎮静効果がある。…ただし。陛下と尚書令の了承とハンコが必要ですがね」
「ーーちょっと待ってください!」
声を上げたのは、意外にも戸部侍郎の景柚梨だった。