蒼き迷宮−1
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戸部に入った春麗は、「仕事のことではないんですけど、どうしても教えて欲しいことが」と言って、紅州州牧・劉志美について鳳珠に尋ねた。
「志美がどんな人か、か…?元兵士、私たちの国試に名の近い紫州試及第二位の”劉子美”の名で紛れ込んでいた。化粧をしていてオネエ言葉を使う。だが人のことをよく見ていて、人物眼はあると思うし、判断が的確だな、年の功かもしれないが。悠舜と黎深とは国試の時によく話していたような気がする…まぁあの紅家と対峙できるぐらいの人間だから、かなりな豪胆さはあるな」
思いもよらない質問に驚いたものの、鳳珠はあれこれ思い出しながら、春麗にわかりやすい言葉に置き換えて伝える。
「だが、急になぜ志美のことが知りたかったんだ?」
「文を…書きたいんです、個人的にお願いしたいことがあって…」
「個人的に?」
訝しげに鳳珠が聞き返す。
「ええ、ちょっと悠舜様とのことで黎深叔父様が引きこもっているらしくて…背中を押していただきたくて。多分今回のことは、鳳珠様でも、父でもダメなんです。もちろんわたくしでもだめ」
「なんで志美なんだ?」
「そうですね…多分、家族以外、人との関係を持たない黎深叔父様のことをよくわかっている方って、同期の方だけだと思うんです。おそらく悠舜様との関係で色々あって心が固まっていると思うので、その関係性をわかっている方がいいかしら、と思いまして。鳳珠様だと、悠舜様に近いし、今回の件で悠舜様を選んだことをわかっているから、余計に難しいと思うんです、うまく言えないんですけど…」
(どうやって伝えたらいいのかしら…とはいえ父様から聞いた話をそのままするわけにもいかない…)
春麗は難しい顔をして唸りながら、キュッと口を引き結ぶ。
鳳珠はその表情を見てプッと笑ってから、長い指で春麗の唇を摘んだ
「家鴨みたいな口になっているぞ。そんな難しい顔しなくても、文は書いてやる。まぁ正直、話はよくわからないから、詳細は志美に直接伝えてくれ。私がしてやれるのは、口添えすることぐらいだ」
笑いながら指を離す。
「ありがとう、ございます…」
家鴨って、と少しぶすくれる春麗を見て、鳳珠は機嫌良さそうに口の端を上げた。
「さて、なんと書くかな。私のかわいい妻が折り入って相談したいことがあるから一緒に文を送るのでよろしく、って感じでいいか?そういや、結婚したことを伝えてはいなかったな…まぁ知っているだろうが書いておくか」
と楽しそうに料紙を出して書き始めた。