黄金の約束−1
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「…変ですね、来客の予定はないんですが。お嬢様?どなたかいらっしゃるんですか?」
目に飛び込んできたのは、髪のび放題、髭のび放題、なりはボロボロでむさ苦しい、いかにも不審な人物が黙々とご飯をかき込んでいる。
「お嬢様、ダレですこの人」
「え?ああ、えーとね」
秀麗と春麗は戸惑った表情のまま、秀麗が説明をしようとすると、急に動き出した絳攸が掴んでいた鶏が、びっくりして手を離した隙にかすかに風を切る音がしたかと思うと、飛び立った。
「往生際のわりーニワトリだなぁ」
見れば、不審人物の左手の中にニワトリ、右手には棍
険しい顔の静蘭に
「あっ…いやいやお前、もしかして”小旋風”?」
静蘭は男の胸ぐらを掴むと部屋から即座に放り出した。
長い前髪をかきあげると、左頬に十字傷
「…お前、もしかしなくても燕青か?」
聞けば、用事で貴陽にきていたがろくに食べておらず、ご飯のありそうな門番のいない立派な邸で行き倒れた、ということらしい。
「ー今すぐ回れ右をして出ていけ、このヒゲ野郎」
「静蘭?どうしたの突然?」
「いいえ、なんでもありませんよ、春麗お嬢様」
(静蘭の笑顔、いつになく胡散臭いわ・・・)
春麗は冷静に様子を見る。
「今すぐ捨ててきましょう、今すぐに!!」
春麗は男をじっと見る。
(あれ?)
いつもと、見える景色が違う。
明らかに人生の終わりとかではない、もっと近い何かと思われる。
(何かしら、これ…)
髭男を見ながらパチパチと瞬きしてみたが、その時にはもう何も見えなくなっていた。
それについて考えているうちに話が進んでいて、秀麗が”燕青”と名乗るクマ男にも夕食の誘いをしていた。
帰宅した邵可はびっくりはしたが、あっさり笑顔で受け入れた。
「燕青くん、と言ったね。貴陽にはどのような御用で?」
「ええと。人に会いに。会うのがちょっと難しい相手なんで、しばらく滞在するつもりです」
燕青が茶州からきた、という話の時に、春麗は少し顔を顰めた。
(茶州といえば、黎深叔父様のお友達の悠舜様が10年近く前に行ったところだわ。確か州牧は国試を受けていない者だと聞いている。まさかね…?)
その流れから、楸瑛が静蘭に茶州からくる賊退治を依頼していることがわかり、静蘭が燕青に振ろうという話題になっていた。
結局、一日金5両で静蘭が請負い、燕青が邸の用心棒として置いて置かれることになった。
(一ヶ月なら、彼の正体もわかるだろうし、悠舜様の話をする機会があるかもしれない)
子供の頃に見てしまった悠舜の”先”、封印したつもりではいるが気にはなっていたのである。
春麗は自分の思考に耽りながら、話半分で聞きながら采をつまんでいた。
「春麗、秀麗。ちょっと頼みたいことがあるんだが…」
絳攸が徐に口を開く。
「ひと月ほど朝廷で働く気はないか。後宮じゃないー外朝で」
「やります!やらせてください!!」
秀麗は満面の笑みで即答した。
官吏になりたいという夢を持っている、秀麗らしい答えだった。
「春麗は?」
絳攸はじっと春麗を見る。
春麗はその視線を逸らすことなく、反対にじっと見返して言った。
「絳攸兄様、どういった事情で?」