蒼き迷宮−1
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本当は、ここからではない方がより良いのじゃが、ちょっときつくての、と言いながら、羽羽は昊を指差す。
「まずは藍州、だいぶ前に水の卦が出た。朝議では話題になっていないようだが、夏から長雨が続いているはずじゃ。それから碧州、蝗害は土の卦に誘われて少し早く出ただけで、土の卦自体は地震じゃ」
羽羽は唇を噛むーそれが人為的なものであることは言えなかった。
「それから茶州、縹家の星が流れた。英姫殿はご存知か?」
「茶太保の奥方ですよね?お会いしたことはありませんが、茶太保から話はよく…」
「そうか。英姫に不幸が…起こる。茶州は代々、人運が良くないのじゃよ。英姫が嫁いで抑えていたが、安定が崩れる。当面、身内の揉め事で足止めされるじゃろう」
「ようやく新しい当主が決まってこれから、ですのに…櫂瑜様もお忙しくなられるでしょうね」
春麗は昊を見上げたまま瞳をふせた。
「それから紅州…風と土の卦は今の時期にはいつものことじゃが…碧州の凶運が飛蝗とともに風に流されて碧州から紅州に流れ込む。あとは人の運じゃろうな、誰が紅州に行くか…劉州牧と手をくめるかにも関わってくるじゃろう」
羽羽は一息ついた。
「春麗殿が気にされている黄州じゃが…金の卦に異変が起きておる。全部の余波を被って価格が高騰し、経済が暴落する予兆が出ておる。回避するために、より金の卦が強まってきておるの…商都黄州の金気が強すぎると、碌なことがない。武器の金気にすぐ転じ、北方二州を犯すのは昔からじゃ。元々、黄家当主の星並びにも金気がずっと多い…」
(あぁ、だから…)
春麗は鳳珠が黄州に帰らない理由だけを文に書いているわけではない、という、風呂の中で考えていたことと合致した。
おそらくだいぶ前に情報をつかんでいるのだろう。
そして、これから物事が起こる順番が見えてくる。
次の舞台はおそらく紅州だー黎深の”不祥事”を理由に…父が当主を務める紅家が主役となる…可能性が高い。
「今のお話だと、紅州の動きが鍵になりますね」
羽羽は黙って頷いた。
「羽羽様、ありがとうございました。少し座りましょう」
もといた長椅子に戻り、茶を渡す。
向かい合ってしばらく沈黙が落ちた。
先に口を開いたのは春麗だった
「羽羽様が…朝議に出てこられないのは、お身体のことだけではありませんね…おっしゃっていただけない、別の理由があるかと…」
「…」
「秀麗がリオウ殿と縹本家にいますよね?二人は動いていると思います。わたくしが朝廷でできることはほとんどないと思いますが…できる限りを尽くしたいと思いますわ」
「そうしてください。私も櫂瑜もそれを願っていますよ…ただ…無理はしないでくださいね」
羽羽は少し寂しく微笑んだ。
行き着くところまで行き着いてはしまう。
縹家の件に関しては、巻き込みたくないという思いもあるが、どんなに願っても縹家の一族ではない春麗にできることはほぼなく、きっと彼女の役目はおそらく事が起こった後のことだろう。
そして、おそらく自分はそれを見届けられないことも。
心配そうに自分を見つめる春麗に、どういう言葉を残すか…悩んでもなかなか答えは出なかった。