黄昏の宮ー2
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四省六部の長官が緊急で集められた政事堂で
「今度は飛蝗かよ…」
と飛翔が眉を顰めた。
隣の欧陽玉は無表情だった
無理もない、碧州は碧門欧陽家である欧陽玉の故郷だ。
「被害箇所は以下のとおりです。発生源は主に碧州の天山江ぞい、そこから徐々に紅州と紫州に侵入していると思われますね。碧州の農作物はほとんど壊滅的だと思っていいでしょう」
被害の状況をまとめた資料を見ていた刑部尚書・来俊臣が、眉を上げた
「…発生場所と被害にばらつきがあるように思えるね、特に紫州への侵入が少ない。思ったよりまだ大群になっていないようだ。被害が少ないのはそのせいか」
凌晏樹はぱちぱちと資料を見ながら、小さく首を傾げた
「…ふぅん?これを見ると被害が最小限に抑えられている箇所は、もしかしなくても旺季様が過去に赴任やら巡察やらしていたところがほとんどじゃないですか?」
吏部侍郎・楊修が眼鏡の奥の目を細めた
「…確かに、そのようですね。旺季殿、もしや各地に任官及び巡察する折々、対策を講じていらしたのでしょうか?」
「それが仕事だ、当たり前だろう。」
旺季の淡々とした言葉が落ちた瞬間、重臣たちの誰もが王を見た。
(王の自業自得とは言え、実にくだらない…)
凌晏樹が先導した
「確か、古より蝗害を抑える力がある者が本当の王である、と言われたことから付けられた漢字とか。陛下も頑張りませんと」
という言葉から、春麗がため息をつくような意見が次々と上がる。
傍目にもわかるほど真っ青な顔で、王は一点を見つめている。
(これは…悠舜様が事前に道を示していない?)
王の表情を見ていた春麗は、視線を悠舜に移す。
それに気がついたのか、悠舜はパッとこちらを見た。
いつにない冷たい表情。
(これは…)
その瞬間、春麗は見るー見えにくかった悠舜の過去を。
さっと春麗の顔色が変わった。
「そのとおりですな。蝗害対策は歴代、御史台が担当していますがー」
「まずは主上のお考えを、先に」
旺季と悠舜の声で現実に引き戻される。
(見えにくかった、はずだ…どうやら、悠舜様の場合は、ご自身が見せている顔の過去しか見えない…先も同じ理屈だとしたら、昔見えたあれはなんだったのかしら…いや、人生の先は過去とは違う法則なのかしら?)
王の沈黙の間に、軽く自分に起こった状況を整理する。
だがここに集中してしまうと足元を救われかねない、と頭の片隅に追いやって、懐から扇を出してしっかりと握り、真っ直ぐ前を見直した。
「我が君の、最も良いと思われるお考えを」
黙りこくる劉輝に、悠舜が促した。