黄昏の宮ー2
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「あまり無理はするな」
鳳珠は毎夜、蝗害関係の資料をまとめる副官たちに声をかけた。
「実際に発生してしまうと、戸部でできることは少ないですけれどね、備えあれば嬉しいな、ですよ」
夜休憩のお茶を淹れながら、春麗はニコニコと配る。
夜休憩…春麗が侍童時代に導入した戸部の休憩は一日一回だったが、深夜まで作業がかかる時や泊まり込みの時には、もう一度休憩を入れることにした。
ちなみに泊まり込みの時は春麗が邸に連絡をして、簡単な折り詰めを人数分運んでもらっている。
楊修が吏部侍郎になってわずかに増員されたが、幸か不幸か、下官はともかく戸部長官たちの残業環境は、働き者の戸部尚書補佐のおかげで、日に日に整っていってしまうのであった。
「それにしてもこれから冬になるからな、北の二州は特に困るでしょうね」
柚梨が手を動かしながら、鳳珠の顔を見る。
「発生する地域にもるけどな、穀倉地帯の紅州で起こると、目も当てられん」
「紅州州牧の劉志美殿はあなた方同期とお親しかったですよね?」
「あぁ…縁があってな…あいつなら、自分のところを守るために、作物を空井戸に埋めて隠すぐらいはやりかねんな」
春麗は少し眉を顰める。
「なんだか…州牧まで紅家の方のようですね…」
「マトモではないが、悪い奴ではない。柚梨や…特に春麗のことは気にいるだろうな」
くつくつと喉の奥で笑う鳳珠を、(どんな方なんだろう?)と不思議そうに春麗が見ていた。