黄金の約束−1
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「国試の、女人受験ーこれを導入したい」
朝議の場で王から放たれた一言。
ざわつく中、何も言わずに退室した者が一名。
「馬鹿っっっ!!!!」
絳攸の怒声が飛ぶ。
「あぁいうことは、しっかり根回しして、時期を見ながら出すものだ!まだ草案も煮詰まっていないというのに何をとち狂って!!」
「す、すまない・・・」
「これは問題外、これは練り直し。あんたやる気あるんですか?」
バサバサと料紙を捨てていく。
「言っときますが、、まだまだ及第点には程遠いですからね。こんなんじゃとても黄戸部尚書を納得させることができません。何度も言いますが、あの案を今年中に通したいなら、最低限、うちの上司とあの方の賛意を取り付ける必要があります。黄尚書はうちの上司と並んで、次期宰相候補と言われる人物ですから、彼の攻略は必須と思っておきなさい」
まだまだ絳攸の説教は続く。
劉輝は、自分は王として敬われていないのかも、と最近ようやく思い始めていた。
「それぐらいでいいだろう、絳攸。そろそろお茶にしましょうか?」
将軍なのにすっかりお茶を淹れるのがうまくなった楸瑛が取りなす。
「必ず通しますよ、あの議案」
絳攸のひとことに、劉輝の表情が引き締まった。
「静蘭」
「これは藍将軍に絳攸殿」
「これから帰りか。一緒しないかい?」
「あぁ、今日は4日に一度のお夕飯の日でしたね」
2000両もの金を邸の修理と残りは豪快に使ってしまった邵可一家。
秀麗の手料理をご馳走になりたい、という二人に「まさか手ぶらではないですよね?」と圧をかけたのは静蘭だ。
よって、二人は食材持参で四日に一度、邵可邸に通っている。
「それにしても、もう一人”お嬢様”がいるのは知らなかったから驚いたよ。春麗殿は今日はいるのかい?」
「さぁ?これだけ暑いし、そろそろ嵐の季節だから賃仕事を増やすと言っていたので、帰ってみないとなんとも」
静蘭はしれっと答える。春麗は昔から邸を開けがちなので、正直よくわからないのだ。
「静蘭は春麗殿には結構厳しいよね。秀麗殿に対する時と全然違う。初めて会った時は存在そのものにも驚いたけど、秀麗殿の双子と聞いてもう一つ驚いたよ。顔も
「秀麗お嬢様も春麗お嬢様と絳攸殿が旧知と聞いて、口をあんぐりあけてましたね。旦那様はご存知のようでしたけど…ちなみに、私も絳攸殿と知り合いで、しかも”兄様”と呼ばれるぐらい親しいとは知りませんでした」
静蘭はチラリと絳攸に嫌味な視線を送る。
「話す必要がないから話さなかっただけだ」
面倒くさそうに絳攸は答えた。
(春麗との関係の詳細を話すと、必然的にあの人の話になる。秀麗に聞かせられない)
実際、春麗が黎深の元へ通っていた詳しい理由は絳攸は知らない。
知るにはあまりに自分も幼かった。
ただし、黎深が考えなしに何かをすることはないので、事情があるのだろうと察している程度だ。
そして、黎深の自分に対する態度と、春麗に対する態度の違いもいまだに気になるところではある。
絳攸は絳攸で、悩みが多いのであるが、誰もそんなことは知らない。
「春麗殿は着飾ったらすごく美しいだろうな、貴陽でも上位三位に確実に入る」
ニヤける楸瑛に冷たい視線が飛んだ。
「アホな想像するな、常春頭」
「藍将軍、春麗お嬢様も大切なお嬢様ですからね」
二人から飛ぶ殺気に、楸瑛は首をすくめて笑った。
「それはともかく、絳攸殿がお食事会の後に秀麗お嬢様の勉強を見てくださっているので、お嬢様も喜んでいますよ」
「絳攸のシゴキなんて結構厳しいのに、よくついていってるよね。でも春麗殿は参加してないんだろう?」
「あいつに教えることはないからな」
やはり、春麗に対しての態度は冷たく感じる。
楸瑛は真意を探るような顔をして、絳攸を見た。