黄昏の宮ー2
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その日は、満月が夜昊にぽっかりとかかっていた。
春麗は夜着に着替えて回廊からそれをしばらく見て、鳳珠の室の扉を開けて声をかける。
「お月様が…とても大きいの。いつもより」
「そうか…」
鳳珠も回廊に出て、しばらく二人で眺める。
虫の音をしばらく聞いてから、室に戻って長椅子に隣り合って座る。
「なんだか、次々といろんなことが起こりますわね…」
「あぁ。本当に、ここのところ立て続けだからな。大丈夫か?」
トントン、と春麗の胸の上の方を指先で叩く。
春麗は鳳珠を見上げてからぱちぱちと瞬きをしてーきゅっと抱きついた。
「鳳珠様が支えていてくださるから…わたくしは大丈夫ですわ」
(最近やたらと甘えてくるのは、この先がさらに難しいことが送るのを見てしまって、少し受け止めきれなくなってきているということか?)
鳳珠は春麗のサラサラの髪に指を通しながら考えながら聞いた。
「どうした?」
「何か、まだ大きなことが起こる予感がして不安で…でも、鳳珠様と一緒にいると、大丈夫、って思えます…」
普段より少し幼いーある意味、年齢相応の様子で、春麗は答えた。
鳳珠は安心させるように、髪を撫でて、春麗のこめかみのあたりに口付ける。
机に置いていた蝋燭がじり、と音を立てた。
次の瞬間、床がー室全体が大きく揺れた。
「春麗!!」
きゃっ、という春麗の悲鳴に、鳳珠が腕を回し抱き寄せると同時に、机案の上の蝋燭の火を吹き消した。
ゆらゆらと大きく揺れるのに震える春麗に「大丈夫だ」と声をかけ、腕の力を強める。
程なく揺れはおさまり、鳳珠は腕を解いて宥めるように春麗の背中をなでた。
程なく、バタバタと廊下から足音がする
「御館様、奥方様、ご無事で?」
家令の声だった。
「あぁ、火を消してしまったから入れてもらいたい」
家令が入室してきて、長椅子の前の蝋燭に火を付ける。
「この室は大丈夫のようですね。私の室はだいぶ書物が落ちまして。これから全体を確認しておきます」
「あぁ、頼む。また揺れるといけないから、皆にも気をつけるように言ってくれ。明るくなってから見たほうがいいところは明日まで待て。無理はするな。特に問題がなければ、報告も明日でいい」
「かしこまりました。それにしても、貴陽で地震とは珍しいですね」
家令がいいながら出ていく。
その一言に春麗がハッとして、息をつめて見つめていた。