黄昏の宮−1
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呼びつけられた葵皇毅は素早くその場の面子を確認した。
悠舜、邵可、そして悠舜の護衛である静蘭。
どこかに李絳攸と藍楸瑛もいるだろう。
そして、つい今しがた、扉から顔を出していた紅春麗と黄奇人も目に入った。
最後に皇毅は冷ややかに王の取り乱しっぷりを見物した。
「…どう、いうことなのか、きちんと報告をお願いしま…報告を、したマエよ、葵長官」
王様なのに威圧もへったくれもない。
春麗と鳳珠は呆れて視線を合わせた。
だいたい、一御史の行方不明に対して、長官を呼びつけること自体がおかしいのだ。
「…その前に、その情報はどこから手に入れましたか?御史台に関することはなんであれ機密事項です。まだ私と尚書令しか知らないはずですが」
「静蘭?」
「私は伝使から、主上にも奏上するようにと言われましたが…」
「ちなみにそこの扉から顔を出している二人はなぜそこにいる?」
皇毅が冷たい双眸を向ける。
「帰ろうとした時に、伝使に紅春麗が呼び止められた。紅秀麗とリオウが行方不明になったという件で主上と話し合いをするから紅春麗に来るように、と伝えろと人づてに鄭尚書令に言われた、ということだ。時間も時間なので、私は送りにきただけだ」
「はい。でも先程、葵大夫がおっしゃられたように、御史台のことは機密事項なのにおかしい、と話しながらきたところです」
皇毅と悠舜はチラリと目を見交わした。
「情報が漏れたな」
「そうですね…」
春麗はこの場に不要、と自ら判断して、身を引くことにした。
「そういうことであれば、わたくしを呼び出されたのは鄭尚書令ではなかった、ということですね。であればこのまま失礼します」
「いや…聞かれてしまったのなら同じことだ。二人とも入ってもらってかまわぬ。最も…」
皇毅は劉輝に視線を移して言った。
「報告せよとの仰せですが、現段階で私が奏上すべきことは何もありません」
劉輝はなんとか食い下がった
「それは、今は捜索を始めたばかりで言えることがない、ということか?失踪したのは紅御史とリオウだけなのか?燕青と蘇芳の行方は?」
「捜索?あいにく、御史台はそこまで暇ではありません。持っていかれて困る情報も紅秀麗には与えていません。陸清雅ならともかく、現時点で御史台を一御史のために動かす気はありません」
皇毅は馬鹿にしたような目つきで嗤い、静蘭は噛み付くように皇毅を睨んだ
「一御史?紅御史は紅家の息女であり、王の後宮に入ることが決まっているのですよ!」
「紅家の息女だからなんだ?後宮入りする娘だから特別扱いしろと?寝言は寝てほざけ。あの娘は官吏だ。私の配下である以上、庶民だろうが公主だろうが同じ扱いをする。ーーー紅秀麗をいちばん官吏として見ていないのは、貴様らだろうが」
鳳珠と春麗は残念ながら葵皇毅の言うことがもっともだと頷いた。