黒い蝶ー3
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「この度は、不肖の弟、紅黎深および我が一族が引き起こした恥ずべき振る舞いと不祥事の数々、当主として心よりお詫び申し上げます。他を顧みぬ驕慢な愚行の数々、申し開きなどできようはずもございません。名に奢り、官吏の意識に欠け、朝廷及び国にどれほどの不安とご迷惑を与えたかを思えば、主上のご判断は当然と存じます。紅姓官吏の復職を認めてくださった主上のご厚情に深謝こそすれ、これ以上のご寛恕を請うつもりは毛頭ございません」
聞いていた欧陽侍郎の首筋にじわりと汗が伝った
「…ちょっと…これは…とんでもないことが起こるかもしれませんよ…」
悠舜、旺季、春麗は泰然としていたが、あの葵皇毅でさえ眉を動かしたのが見えた。
そして鳳珠は先を読んで仮面の下で眉を寄せた。
「一両日中にはすべての経済制裁を解除できるよう通達しております。黎深は蟄居処分ですが、末弟玖琅及びその子供、伯邑と世羅もすでに各地を飛び、対応させております。紅本家の目付けはひとまず玖琅の妻である末の義妹に預けてまいりました」
黎深と春麗、秀麗以外の紅家直系がすべて各地を駆け回っているということだ。
「私がここへ参りましたのは。他にも理由があります」
邵可のその言葉に、春麗はそっと瞳を閉じて懐に手を入れた。
これから何を言い出すか、何をするか、そして”当主交代”を自分に通達しなかった理由もわかった。
ふぅ、と息を吐いて瞳を開いて、懐から黄色の扇を取り出し、左手を添えて手に持つ。
どんなに”黄家の嫁”の姿を貫いても、紅家のしがらみから抜けられるわけではないのはわかっている。
”紅春麗”と名乗っている以上、官服が準禁色の紅色なのも、もちろん紅家の象徴だ。
だからこそ、周囲はともかく、鳳珠と父には紅家当主の娘ではなく、彼の妻でいることを選択していることをわかってほしいという意思表示だった。
邵可の真横に位置している自分の姿は、邵可の目の片隅には入っているだろう。
邵可は一瞬だけ視線を春麗に流してそれを見た後、誰にもわからない程度に小さく頷いてから、両手を別の形に組み替え、改めて膝をついた。