黒い蝶ー3
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「なるほど、経済封鎖が解かれても石炭と鉄がない可能性がある、ということだな。どうしてそう思った?」
「百合叔母様へ、秀麗から今回の出仕拒否については”鳳麟”からの指示として回ってきた、と話があって…紅家にとっては当主と同じ…いえ、それ以上の者なんです。本物か偽物かは分かりませんが、鳳麟の名で指示を出すということは、ただ単に紅家を排除したい、などという生やさしいことではないです。もっと大きなものが描かれていると考えるのが筋です。ただ、鳳麟にしては、やり方が愚直すぎるので…偽物かと思っていますが」
鳳珠はそこまで聞いて、塩の時の話を思い出した。
「すぐに全商連に確認しよう。柚梨、頼んだ。ここに戻ってこなくていいから、その代わり帰りに私の邸に来てくれ」
「はい」
バタバタと柚梨は出て行く。
「鳳麟は誰も会ったことがないんです。…だけど、いないという保証はないんです。そして、黎深叔父様が更迭されて、父様が辞職したのと入れ替わるかのように出仕拒否の話を出す、ということは、朝廷の中にいるのではないかと思っています」
春麗は小さくため息をついた。
「時期が良過ぎる、ということか…お前が心当たりを”見れば”わかるのではないか?」
「そうですね…でも、実は過去は見えたり見えなかったりなんです。子供の頃は割と見えていたので、例えば、父様とか宋太傅の過去は見えてしまったんですけれど…」
と言いながら、鳳珠をじっと見つめる
「鳳珠様の過去はあまり見えないんです。悠舜様や黎深叔父様も…全部は、無理で。あ、でも子供の頃にお会いしてますよね?なんでかしら…?」
と首を傾げた。
「だから、今回の件については、なんとなくの充てはできるのですけれど、確証にならないので役に立たなくて…ごめんなさい」
なんて中途半端な力、と情けなくなってきた。
「いや、いい。そこに頼ったところで、証拠はと言われても何も出せないしな…ただ、先については上手く見れば首謀者はわかるだろう」
「もしかしたら、そこまでしなくても自ら出てくださるかもしれませんね。見えたところで証拠がなければ何もできませんし…いずれにしても、周囲に気をつけておくようにしますわ」
その日は手早く仕事を済ませて、柚梨を待つために定刻で邸へ戻った。