黒い蝶ー3
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ふっと外に気配がした。
空気を入れ替えるかのように窓を開けると、文が差し出される。
無言で受け取り、机案に戻って広げた。
(百合叔母様!)
紅姓官吏への一斉指示は”鳳麟”印だったことと、自分が御史台に拘束されて後宮にいる、とのことだった。
経済封鎖の影響で仕事は山ほどありまだ抜けられない。
春麗はとりあえずのところまで高速処理で済ませて、これまた高速で文を書き、「ちょっと出てきます」と言って戸部を出た。
途中で影に文を渡す。
「紅州に向かっている父様に最速で届けてくださいな」
それから後宮に足を向けた。
拘束しているのが御史台なら、あまり正面切って出入りするのは向かない。
隠し通路を使って中に入る
「叔母様」
扉がさっと開き、滑り込むように室に入った。
「さすがだね春麗。隠し通路から来たんでしょう?ここでは丁重に扱ってもらっているから正面から来て大丈夫だよ」
「叔母様、それも書いておいてくださいよ。鳳珠様に怪しい視線を向けられながら出てきましたよ。ところで、”鳳麟印”ってことは紅門姫家ですよね…」
「えぇ、おそらく邵可様も黎深も、もちろん私も会ったことないわ。黎深の当主就任の時は欠席だったの」
「本物か偽物かはともかく、誰が、なんのためにってことを考えた方が良さそうですね。単に紅家を潰すだけではないと思うのです…」
春麗はしばらく黙って考えた。
紅家当主が絡んでいない経済封鎖、だけではない気がする…
「叔母様、経済封鎖した石炭と鉄ですが…紅州にあるかしら?もしこれがどこかに移動しているとか、なくなっているとか…」
「ちょっと待って春麗、だとしたらかなり大量だよ?」
「大量の鉄と石炭を何に使うか…贋金騒動に塩での儲け…やっぱり初めに睨んだ通り戦…」
「すぐに黎深と邵可様に手紙を書くわ」
「先程、百合叔母様と鳳麟の件、それから秀麗が後宮に入れられそうだという話は文に書いて影に出しています。今の鉄の件は紅州で調べてもらったほうが、より正確かもしれませんので書いてください。もちろん、戸部でも確認できるか相談してみます」
「頼んだわよ、くれぐれも気をつけて」
春麗はサッと出て行って、戸部に戻った。
「秀麗ちゃんもだけど、春麗も相変わらず聡いわね…」
百合はひとりごちてから、早速と文を書き始めた。