黒い蝶−2
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「妃と官吏を兼ねる法などない。そんなバカな法を作る気もさらさらない。誰も彼女の言葉に逆らえなくなる。雪崩を打って官吏どもがまた紅姓官吏に擦り寄る。紅一族の自制を促すどころではないよ。私の目の黒いうちは断固として認めるつもりはない。ー妃か、官吏か、二者択一をしてもらうのが絶対条件だ」
欧陽侍郎も頷いて口を開いた。
この二人の言葉で風向き変わりつつあるを…皇毅も、そして鳳珠も感じた。
山ほどきている紅秀麗の退官要望書。
紅家の機嫌も取れ、本人はいなくなり一石二鳥の策だ。
良くも悪くも紅秀麗は目立つ。
「来尚書のおっしゃる通り、籠の蝶になってしまいますが、飛べなくても蝶は蝶。籠の中で主上をお慰めするのも立派なお仕事ですよ。主上が可愛がって差し上げれば、寂しくないでしょう」
春麗はカチンときて、口元に当てていた扇を荒々しく閉じて、パチン、と手を打った。
秀麗の一番大切なものを取り上げ、その心を踏みにじるやり方だけは許せなかった。
だが、紅姓官吏のーそして秀麗と同じく紅家直系の姫である自分が、ここに口を挟むことはできない。
主上の婚姻と身内としての意見は、また別のものだ。
まして、主上の要請ー本人がどう思うかはともかく、軽々しく断れるものでもない。
晏樹の物言いがだんだん腹立たしくなって、さらにもう一段階握りしめたが、鉄扇だから黎深のように割ることはなかった。
黎深がよく扇を割っていた理由がよくわかった気がしたし、割れるぐらいの方が今はよかった。
その様子を、晏樹は面白いものでも見るように、薄く鼻で笑いながら見ていた。