黒い蝶−2
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「常平倉を開けるべきですな」
旺季が真っ先に口火を切った。
それを皮切りに、また議論が紛糾する。
国試派は官給田をほったらかしにしているものが多いが、貴族派は落ちぶれて食いつめたため、真面目に耕しているものが多いという。
春麗は邵可一家の分として秀麗と人を使って耕したり、遊ばせている他の官吏の田を借りて耕作しているので、そのまま差し出せばいい、と思い出していた。
話は、紅本家に経済制裁を撤回させるための話に移っていく。
旺季はバカにしたように劉輝と悠舜をジロジロと眺めた。
「まさか、説得のために主上自ら紅州に赴かれるおつもりはないでしょうな。最初に言っておきますが行くだけ無駄です。とりわけ当主を更迭したあなたのいうことなど、紅一族が頭から聞くわけありません。火に油を注ぐようなものです」
(さすが旺季長官、話の運びがうますぎる…)
春麗は瞑目した。
「ーいや、玉座は空けぬ」
「そうですね。もちろん王の仕事は”王の官吏”にやっていただきましょう。あなたのことですから既に動いていると思いますが、今回は公式に中央から御史を勅使として立てます。用意が出来次第、紅州に派遣し、紅州府および紅家と交渉させ、冬になる前に事態の打開を図ってください。あなたの選んだ御史で構いません。ーできますね、葵長官」
ピクリ、と皇毅のこめかみが波打った。
矜持の高い皇毅が「できません」と言えるはずがないことを見越した悠舜の一言だった。
「いいだろう。王の尻拭いも御史台の仕事だからな。御史台は手柄を立てても喜べない唯一の部署だ。立て続けの不祥事を情けなく思いこそすれ、誇る気はサラサラない。尚書令ならば御史台の出番が多い政事を恥と思うべきだな。向いてないんじゃないのか」
一歩も譲らず皇毅は言い放った。
「はいそこまで。決着つけたいんなら冥土でやんなさい。みんなに迷惑だから」
”中立”の凌晏樹が口を開いた。