黒い蝶−2
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「今日あたりから紅姓官吏のクビを切り始めるぞ」
朝の待ち合わせのおはようの次に、珀明は早々に切り出した。
「五日ですわね…いいところじゃないですか?それにしても、主上がとっととやると思ったのに、楊修殿がねぇ…」
「あの人がやるなら、後任人事も適材適所だろうな。主上にはできない真似だ」
「そんなの、クビだけ切って後任は吏部で、っていえばいいだけじゃないの。全く、悠舜様がついていながら…」
春麗はため息をついた。
「これでさらに主上への風当たりは強くなるわね。陣取り合戦が本格的に始まるわ」
「また帰ってこいって文がくるな…」
珀明もため息をつく。
「玉様はなんと?」
「あぁ…俺に任せる、と。だが今のところはまだ静観だ。黄尚書もそうなんだろう?」
「前に話したあと…正式に帰還命令が出たわ。でも、残ることを選ばれた…その後、どうなっているかわからないけれど、今回は紅家の件があるから、もしかしたら黄家から別れろ、って文が来るかもしれないわね…」
「お、おい!」
珀明がそれはあんまりだ、と言い始める
「実際に来ているかどうかも知らないけれど…鳳珠様にそういう文が来たのであれば、遠慮なく言って欲しい、とはお伝えしたわ。それはそれは、ものすごく怒られたけどね」
その時のことを思い出して、思わず目を伏せた。
あんなに怒ったのを、あんなに悲しそうなのを見たのは初めてだった。
あんなに誠実に傾けてくださる愛を疑ったわけでも、測ったつもりはなかったが、結果的にそうなってしまったことをものすごく後悔したのだった。
そしてその後…
朝から余計なことまで思い出して、ふるふると顔を振って上げた。
珀明はそれに気づかず、少し考えてから口を開いた。
「だろうな…もし俺に妻がいてそんなこと言われたら、俺も本気で怒る」
「そうよね…今までの人生で最も後悔した一言になったわ」
「でもまぁ、黄尚書に愛されているということだ、よかったな」
フフ、と笑ったが、思い出してしまったことで少し引き攣ってしまった。