黒い蝶−2
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実際、あの緊張感のある中でそこまで見抜いていたのか、と柚梨は心の中で舌を巻いていた。
やはり春麗は只者ではない、と先程と同じことをもう一度思う。
「春麗ちゃん…」
「国試出身、女人官吏、紅家直系…さらに黄家に嫁いでいますから、葵長官ー貴族派からみたら、彩七家の権化みたいに見えているでしょうね。婚姻のことは言っていなくても御史台は今回の件でもう一度紅姓官吏の素性は全て調べ上げ直したと思います。なにも違反しているわけではないですから気にしていませんが、紅家の件が拗れたり、またはあっさり片付いた場合に、次の手としてこれをネタに仕掛けてくることも覚悟していますわ」
ここまでいって、自重気味に笑った。
「わたくし…秀麗ほど立派な動機じゃないんです、官吏になったの。とても個人的な、えぇ、私情まみれの、でもささやかな願いで…前置きが長くなりましたけれど、柚梨様の質問、葵長官がきちんと官吏としての秀麗を見てくださっているのがよくわかって、嬉しく思いましたわ」
柚梨はしばらく春麗の言葉を心の中で反芻してから答えた。
「そうですか…春麗ちゃんは、先程、官吏になったのは立派な動機じゃないと言ってましたけど…きっかけなんてなんでもいいと思いますよ。なることが目的ではなくて、なってからどうするかが大切ですから。春麗ちゃんは秀くんとはやり方は異なりますが、官吏として立派にやっています。そこだけは胸を張っていてくださいね」
「ありがとうございます」
春麗はふんわりと嬉しそうに微笑んだ。