黒い蝶−2
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「春麗ちゃん、今日の葵長官と秀くん…どう思いました?」
戸部へ戻る途中、回廊を歩きながら、人気がなくなったところで柚梨が聞いてきた。
「柚梨様、わたくしの免官要求、戸部に結構きてますでしょう?特に最近増えていませんか?」
春麗は柚梨の質問と全く異なる質問で返した。
思わず柚梨は立ち止まる。
春麗も足を止めてから目線をずらすと、ちょうどいい場所が目に入り、少し微笑んで伝えた。
「そこの四阿で話しませんか?」
二人は移動して腰掛ける。
「おそらく、御史台には…秀麗はもっと届いているでしょうね、御史大獄で予想通り”官当”は絶対使わない、と豪語したようですから…紅秀麗に捕まったら最後、となりますわね。そうすればいなくなってもらうのが手っ取り早いでしょう。特に高官たちは。」
黎深の邸で絳攸に確認したことの一つだ。
正直、御史大獄での出来事と春麗は全く関係がないが、これを機に目障りな女人官吏は退場してもらいたい、と思う人もまだまだ多いということだ。
「秀麗は…公子争いの時にどんどん人が死んでいくのを見て、もうそんな景色は見たくない、と…それでずっと官吏になりたいと言っていたんです。あの子の想いは本物です。どんなに大変でも、今もほんの少しの揺らぎもない…葵長官はその本質だけは汲み取ってくださっているんだと思いましたわ。クビにする、って毎日言われているようですけれど…表現の仕方はともかく、使えない者はいらない、っていう考え…少し鳳珠様と似てますわね」
フフ、と笑ってから続ける。
「ここのところもそうでしたけれど、今日は葵長官と秀麗の会話を聞かされましたが、随分とわたくしも試されている気がしましたわ。今回の件、御史台として動くのは秀麗ですけれど…紅姓官吏の出仕拒否や紅家の動きに関して、朝廷側で政治的に利用するのであればわたくし、と考えていらっしゃるのかもしれません。そういう意味で官吏として利用価値があるか、見られていたように思いました」
一度きって、柚梨の表情を見た。
驚いたような、不思議そうな顔をしていた。