黒い蝶−1
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「…これから…冬…に……」
「そうだな…私が紅藍両家をしめると言った理由がわかったか?散々言ったはずだ。紅家も藍家も莫大な財力と権力を背景に、朝廷を馬鹿にしているとな。王がことあるごとに紅藍両家を特別扱いしてヘラヘラ下手に出ているからこうして増長するんだ。紅姓官吏といい、一族と紅州以外はどうでもいい、生粋の一族主義には恐れ入る。他に意見は?」
後半は春麗の顔を見ながら葵皇毅は言ったが、秀麗は気がつかなかった。
春麗は表情を変えずに真っ直ぐに葵皇毅を見る。
皇毅は紅玖琅がこの指示を出したか、秀麗に聞いた。
(ありえない)
春麗は即答できたが、ここで口を挟むのは得策ではないと黙る。
その様子も皇毅は見ていた。
秀麗を試しているフリをしながら、この場はずっと春麗を試していた。
認識していたのは皇毅と当事者の春麗、そして柚梨だけで、秀麗はもちろん、春麗に興味がない清雅にもわかっていなかった。
最も、春麗もそれを見ていることを見越した上で黙っていた
秀麗はそれに気づかずに答える。
「ーありえません、玖琅様は紅一族を大事にしているかもしれませんが、他人を思いやることができる清廉で篤実な方です……玖琅叔父様がこんな身勝手で無分別な権力濫用をするわけがありません。」
キッパリと秀麗は断言した。
葵皇毅も清雅も、そして柚梨も春麗を見る。
春麗は黙って頷いた。
そして、葵皇毅はー秀麗にとってはー意外にも、面倒そうに眉を寄せた。
「紅玖琅の可能性もある。だが、確かに今回はそうでない可能性も捨てきれん。どちらにせよ、紅一族に関係しているのは間違いない。本家以外の言うことを聞く奴らではないからな」
秀麗はどんな一族か全然知らない。
そして、葵皇毅は秀麗が知らないことを知っている。
だから、要所要所で春麗を見ながら発言をし、確認していく。
春麗がどこまで知っているかはわからないが、黎深との関係を知らなかった秀麗より、春麗の方が紅家の事情には詳しいだろうと判断したためだ。
それは、どんなに秀麗が気がつかなくても。
春麗は聞こえないようにため息をついた。
葵皇毅が自分を試していることはよくよくわかっていた。
なんなら、悠舜が今回の件で自分を出せと言った時点で、仕事の内容はともかく、今回の標的は秀麗ではなく自分の監視と紅家の情報を引き出せるからだ、と。
(悠舜様…)
鳳珠が心から信頼している悠舜を疑うことはしたくない。
だが、悠舜の裏に皇毅…貴族派が並ぶ構図が浮かび、春麗は心の奥深くでもう一度ため息をついた。