黒い蝶−1
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「おかしい…わたくしのところに案内が来ない…」
そもそも嫁いだことを公にしていないので貴陽黄邸には来ないと思っていたが、戸部にも礼部にも案内が届いていない。
だが確実に紅姓官吏は一斉出仕拒否をして外朝は大混乱である。
春麗は魯尚書に断りを入れて、静蘭に会って確認した後、一度実家に帰って文の確認をしたがそれらしいものは見当たらなかった。
そのまま俥を使って、黎深邸に行く。
「春麗!」
「絳攸兄様!ごめんなさい!」
「いや、いい。百合さんからも話は聞いた。お前の判断はなに一つ間違っていない…お前が俺のところに来ていたら、黎深様も俺も速攻でクビだったからな。お前の判断に助けられた、礼を言う」
泣きそうになりながら駆け寄った春麗に、絳攸は先に頭を下げた。
「兄様…それより!紅姓官吏は一斉出仕拒否しています、その件で確認したくて」
「ちょうど百合さんと話していたところだ。もちろん、そんな指示は出していないし、ここにもなにも連絡は来ていない」
春麗は気になっていたことをいくつか絳攸に確認しながら、百合の室に移った。
「春麗、来てくれたんだね。仕事は大丈夫?」
「昼までは礼部なので…尚書にお願いしてこの件で抜けさせてもらいました。父の邸も見てきましたが秀麗宛もわたくし宛も案内がきていないので、誰が出したか不明です。もちろん黄邸にも案内は来ていません。敢えてわたくしたち二人を外した、と見ています。宮城は大混乱していますが…おそらく、これが続くと近日中に楊修殿が紅姓官吏の首を切ると思います」
春麗は冷静に分析しながら答えた。
「なんだって!?」
「私が吏部で人事権を持っていたらやるでしょうね。間違いありません。まずは下っ端から。それで思い上がった七家…特に紅姓官吏の風紀を正します。その他の家も縮み上がるでしょうね、仕事をしなかった吏部尚書で慣れていてほとんど大きな動きはなかった。でも今回の件で、明日は我が身となりますから」
「そうだね…今回は、古参官吏もふくめ全員が出仕拒否しているようなんだ。そうなると、全紅姓官吏に通達を出せる、ということが鍵となるね。誰が指示を出したか…」
百合も慎重に考えを巡らす。
「印の偽造とかもあるかもしれないけれど、とりあえず急いで紅州に向かっている邵可様と連絡をとって確認するよ。春麗と絳攸は宮城の様子を知らせて。春麗、連絡手段はいつも通り」
「はい」
「絳攸はともかく、春麗は今は立場もあるし鳳珠さんのこともあるから、無理のないようにね」
百合の気遣いに礼を言いながら、時間がないから、とすぐに春麗は宮城へ戻っていった。