白虹は黎明にきらめく−3
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その頃、宮城では…
鳳珠が仕事をひと段落させて、一日のことー黎深解任についてーを振り返っていた。
秀麗が御史である以上、そして李絳攸を助けるにはこの一手しか残っていなかったのは誰が考えても明白だし、土壇場でそこに踏み切れたのは何よりだと思っている。
友人としての黎深と、官吏としての、吏部尚書としての紅黎深への評価は別のものだ。
今ではさらに妻を介した身内となっているが。
懐に手を入れてため息をつくと、ふと今朝、春麗からもらった包みに当たった。
引き出して、組紐を手にかけて開ける。
「春麗、お前は…」
天を仰いで、瞳を閉じた。
瞼の裏には出会った頃の、まだ政治的に煩わしいことなど何一つなく、他愛もないことで笑っていた自分たちの姿が浮かんだ。
顔を戻した鳳珠に、「どうしたんですか?」と柚梨が心配そうに声をかけた。
「いや…紅春麗の恐ろしさを痛感していたところだ」
「恐ろしいなんてあなた、そんなことを言ってはいけませんよ!あなたに嫁いでくれたいいお嫁さんなのに、春麗ちゃんが恐妻みたいじゃないですか!」
柚梨がぷりぷりと怒り出した。
「ああ、悪い…褒め言葉だったんだが、言葉が適切ではなかったな。言いたかったのはその反対だ。なんと表現したらいいんだろうな…」
少し困ったように鳳珠は仮面を外して、刺繍をよく見る。
(いつの間にこんな手の込んだ刺繍を…)
視線の先に気がついて、柚梨が近づいてくる。
「おや、立派な刺繍ですね。春麗ちゃんから?」
「あぁ…今日を見越して、用意していたらしい。これが悠舜で」
細い指が梨の花を指す。
「こっちが黎深、そして私だ」
李と林檎をそれぞれ指して、綺麗に微笑んだ。
「…鳳珠…やはり恐ろしい子ですね、春麗ちゃん」
「それ見たことか!」
柚梨は笑ってから
「そういう時は、”素晴らしい”でいいんじゃないですか?小難しい言葉を使うよりしっくりきますよ」
と言った。
「それにしても、この
「あぁ…」
柚梨の掛け値梨の褒め言葉に心から同意した。
「そういえば、先に帰ったのはどこか寄ってるんですか?」
「黎深の邸だ」
「もしかして…春麗ちゃん、それ、三人分作っているかもしれませんね。鄭尚書令にも渡されてるかもしれません。その花の指すところと並び順の意味がわかるのも、三人だけでしょう?」
柚梨の一言に、鳳珠はもう一度上を向いて瞳を伏せた。
込み上げてくるものを抑えるのに必死だった。