白虹は黎明にきらめく−3
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「百合叔母様!」
「春麗!」
百合が春麗を抱きしめようと両手を広げたが、昔のように春麗は飛び込んでこなかった。
その代わりに、深々と頭を下げている
「ごめんなさい、わた、くし…何もできなかった…」
「春麗」
「叔父様のこと…兄様のこと…助けること…できなかった…」
ボロボロと泣きながら、ごめんなさいと何度も謝る。
「いいんだよ、春麗。あれは黎深が考えてやったことなんだから。仮に黎深を動かそうとしても、動くような人じゃないっていうのは春麗もよくわかっているでしょう?」
ぽんぽんと両肩を叩いて起こし、そっと抱きしめる。
百合の腕の中で、春麗はワァワァと泣いていた。
「子供の頃…黎深の邸に行っていた時、きっと春麗はそうやって百合姫に甘えていたんだね…」
邵可は寂しそうに、だが暖かく二人を見ていた。
「そうですよ?邵可様のお邸で春麗は急いで大人になってしまったと思ったから、うちでは甘やかすって私が決めたからね。最も、私も飛び回っていたから、結局あまり甘やかしてあげることはできなかったけれど…その分、黎深が。だけど黎深はあぁだから絳攸へはそんな愛情を見せたことがなくて…だから今回のような暗示にかかってしまったんだろうけどね」
百合はため息をつきながら、「春麗は悪くないんだよ」と頭を撫でて座らせる。
「俺、ここにいてよかったのだろうか…」
家族の会話に居心地悪くなったリオウがぼそっと言ったのを邵可と百合は吹き出して「変なとこ見せちゃって悪かったね」と笑って言った。
春麗が落ち着いたところで、百合がお茶を出した。
思い出したように、春麗は懐から包を出す。
「リオウ殿の具合が悪そうだから、と父様からの呼び出しの文に書いてあったので、栄養補給に少し食べるものを持ってきたの。乾燥果物もあるわ。よかったら食べてくださいな」
と渡した。
「あ、あぁ、もらっておく」
と早速開いて口にする。
リオウは自分が思っている以上に相当疲労困憊していたようで、甘いものを口に入れたら少し楽になってきた気がした。
「それで、これからのことなんだけれど…」
ひゅっと春麗が息を飲む。
「あの二人が黎深を罷免するでしょうね」
「さすがは叔母様、そう、ですね…まぁ叔父様の狙いもそこでしょうから…もしかしたら、紅州に帰るとおっしゃるかもしれません」
「えっ?」
これには百合と邵可が驚いた。
「叔母様、叔父様がお邸に帰られたら、すぐわたくしを呼び出していただけますか?帰る前にいくつか確認しておきたいことがあって」
「あ、あぁ、構わないけれど…大丈夫かな?」
「仮に…解任されたとすれば朝廷との関わりは切れます。そうすれば、大きな問題にはなりませんわよね、父様?」
「そうだね」
「私はしばらく宿に泊まっているよ。終わった時に影から知らせてもらう。そうしたら邸に戻るから、春麗には報告させるわね」
「お願いします」
ようやく、春麗の表情に明るさが戻ってきた。