白虹は黎明にきらめく−2
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翌日、秀麗が礼部に来た。
侍郎室に通して話をする。
「今日来るかと思っていたのだけれど、珍しいわね、礼部に来るのは。お茶でも飲む?」
「戸部に行ったら、景侍郎からこっちだって聞いて。あまりゆっくりもできないから、いいわ。春麗に…聞きたいことがあったの。来ると思っていた、ということは、父様から何か聞いたわね?私たちと吏部尚書との関係、知ってた?」
決して遠回しにはしない、秀麗の素直な性格がそのままでた会話に、ちょっと懐かしさを感じて微笑んで答える。
「えぇ。昨日、秀麗が聞きに来たから、今日はそっちに行くと思う、って今朝、寄ってくださったの。」
「吏部尚書との関係を、どうして知っていたの?」
春麗は少し厳しい顔になる。
午前中は大体礼部にいるが、今日はそれを見越して一日礼部で仕事をすると言ってきて正解だったと心の中でひとりごちる。
「ここから先は、官吏同士ではなく、双子の紅秀麗と紅春麗、家族の会話よ。あなたが聞く内容にもよるけれど、紅御史として聞くなり、聞いたことを利用するのならわたくしは何も話さない」
「春麗…わかったわ。聞きたいことは色々あるけれど、家の…個人のことだもの、利用はしないわ」
春麗はしっかりと秀麗の瞳を見る。
その後、少し先を見てから口を開いた。
「どこから話そうかしらね…そうね、簡単に言うと、わたくし、小さいの頃の記憶が結構あって…あなたも小さい時に吏部尚書である叔父様には何度か会っているのよ。ちなみに、鄭尚書令と黄尚書にも。まだ三人が進士のころに遊びに来られたわ。あなたは悠舜様に懐いていたわね。」
ここで一度切ると、秀麗は大きく目を見開いて驚いていた。
「私が…悠舜さんや黄尚書と会ったことがある…?って…二人ともそんなこと一言もいってこなかったわよ!」
「それは…あなたが覚えていないことが一つと、叔父様があなたに対して叔父としての名乗りをしていないのを知っていて、お二人は黙っていたのよ。叔父様のためを思ってのことだから、お二人を責めないでね」
春麗は笑って答えた。
「それから、子供の頃に、わたくしよく邸にいなかったでしょう?あれは色々あって、黎深叔父様のお邸に行ってたのよ。だから、叔父様のことはずっと昔から知っていたし、絳攸兄様もそう。わたくしはあそこで育ててもらったようなものね」
なぜ、とは言わなかった。
この話にそこは関係ないから。
「わたくしと叔父様の関係はそんな感じよ。他に聞きたいことは?」
「どうして、そんなに近かったのに…吏部尚書は春麗の後見人にならなかったのかしら?」
「…」
(え?まさかこの期に及んで気付いてない!?)
春麗は一拍置いて、クスクスと笑い出した。
「え?笑うところ?」
「ふふふ…まぁ、ね。それについては色々あって…お互い納得づくだから心配しなくて平気よ」
「吏部尚書補佐、は身内だと分かってやっていたのね」
「普通に考えたらすごいわよね、吏部尚書、侍郎、そして謎の尚書補佐が家族なんて。秀麗は知らないかもしれないけれど、絳攸兄様を侍郎に推したのはずっと尚書の下で働いていた方だと聞いているわ。あと、つい最近のこととしては、わたくしは吏部尚書から、尚書補佐を解任されたわ。兄様が御史台に捕まった前の日にね」
「そんな…」
秀麗は再び驚いて目を見張る。
(知らないことばかりだ…)
自分の目の前にあるものを必死で追いかけて対応していたけれど、それ以外のところでいろんなことが動いていたのだ。
当たり前のことだが今更ながらに気付かされた気がして、秀麗は少し胸が苦しくなった。
だが、今そんなことを悠長に語り合っている場合ではない。
「春麗…春麗にだけはいうけれど、いま絳攸様が大変なのよ。暗示にかけられてしまって、仙洞省の…リオウくんが対応している」
「…」
春麗は眉間に皺を寄せて瞳を閉じた。
牢の中で横たわる絳攸は見えたが、その中までは入り込めなかった。
そこから視線を切り替えて様子を見る。百合が来て、絳攸が目覚めるところが見えたところで、目を開いた。