はじまりの風−3
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「んっんん…」
なんか、身体が痛い…
腕を伸ばしてゆっくりと目を見開くと、
「春麗!!!」
と顔がくっつかんばかりの位置に黎深の顔があった。
「・・・???お、叔父様?」
なんか、うまく声が出ない。
「春麗、気がついたんだね、大丈夫かい?どこか痛いところはないかい?」
と言って、水を出してくれる。
上半身だけ起こそうとしても、あまり身体がうまく動かない。
黎深がすぐ気がついて、介添をして起こしてくれた。
「お水を飲みなさい」
と言って、茶杯を渡してくれる。
一口飲んで、キョロキョロと見回すと、そこは後宮の自分の室だった。
「叔父様?わたくし、一体?」
「春麗、春麗は無茶をしたね?あれほど自分自身を守るように言ったのに…どうして…」
(そうだ、秀麗が攫われて、静蘭が倒れて、少し戦って、茶太保と話して、それで…)
そこからの記憶がない。
「秀麗は?秀麗はどうなったの、叔父様!!静蘭は!?」
黎深に縋り付いて確認する。
「秀麗は劉輝様が助けて無事だ。解毒剤も霄大師が持っていてね、君より早く、何日も前に目が覚めて、元気にしているよ。静蘭は怪我がひどいからまだ安静にしているけどね」
後ろにいた邵可が答える。
「よかった…」
ホッとして、背後の枕にどさっともたれかかる。
「よかった、ではない、春麗。君は一週間も目を醒さなかったのだよ?」
「はぁ?一週間も!?」
(全く実感がない)
「どこかで薬を飲まされたのか嗅がされたみたいだね、睡眠不足と過労もあったが、薬との相性が悪くて長くかかったようだ」
黎深はチラリと横目で邵可を見ながら説明する。
「そう、なんですか…でも、秀麗が無事なら、それでよかった。」
心底ホッとして一つ息をつく。
「春麗」
邵可は黎深を押しのけて、春麗の胸ぐらを掴んで激怒した。
「あれほど私は、君も心配だ、と言ったよね?どうして自分を大切にしない!あんな無茶をして、命を落とすところだったんだ!」
「兄上!」
黎深が慌てて静止するが、掴む手の力を入れる。
「と…さま…く、るし…」
邵可が手を離すと、春麗はゲホゲホと咳をした。
黎深が甲斐甲斐しく水を入れてまた渡して春麗に飲ませる。
「でも、紅家で大切なのは秀麗です。秀麗を優先して守っていかないと…」
春麗は本気でそう思っているのだ。
生まれた時に言葉を持っていた娘は、大人の意図を素早く理解してしまい、自分の気持ちに蓋をしてしまった。
「春麗、秀麗を大切にする気持ちは嬉しく思うよ、でも春麗、君も私の娘なんだ。私にとっては秀麗と同じように、春麗も大切だというのをどうして分かってくれない?」
「それは兄上の言う通りだよ、春麗。私も何度も言っただろう、自分自身を守るように、って…春麗がこのまま目を醒さなかったらどうしようかと、気が気でなかったよ」
よく見たら黎深は少しやつれている。
ここで反論しても叱られるだけだし、胸ぐらを掴まれてまで大激怒されたのは生まれて初めてだ。
心配かけたのは事実だと思い
「ごめんなさい、父様、黎深叔父様…」
と素直に謝っておく。
「分ればいい」と黎深は頭を撫でてくれた。