白虹は黎明にきらめく−2
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「そろそろ来る頃だと思ったよ」
「なら、来た理由もお分かりで?」
「奥に行こう」
邵可は個室に案内した。
「父様は不在の間の話はどこまで聞かれてる?」
「特に何も」
「黎深叔父様は相変わらず仕事放棄してます。そして、絳攸兄様が御史台に拘束されました」
「そうか…」
流石に邵可は肩を落とす。
「父様…わたくしたちは無力ですね。見ていることしかでしません…動けるとしたら御史台にいる秀麗だけです」
「君は動かないのかい?吏部尚書補佐だろう?」
「そ、れ、が!吏部尚書自らに解任されましたわ、絳攸兄様が拘束される前日の朝に。この前の吏部査定での吏部尚書補佐としての役割は、吏部尚書に仕事をさせること。それができないのであれば解任は当然です。吏部の裏の仕事は叔父様にずいぶん習いましたが、普通の仕事は全く知りませんわ」
邵可は目を見開いた。
その様子を見て続ける
「ですが、つい数日前まで吏部尚書補佐であったことはわたくしが兄様のところに行けば、御史台に吏部尚書とのつなぎと見られるでしょう。だからわたくしは兄様のところへはいけないのです」
「そうか…確かに、そうだな…」
「おそらく、影から紅州に報告が入っているでしょうから、百合叔母様が来られると思いますわ」
「まぁ、二人のことだから百合姫が一番安心だね」
邵可は、兄として何もしてやらないことに歯痒さを感じる。
だが一方で、この地位を望んだのも自らなのだ。
そのことでこの十年、幸せだったが、今回だけは後悔の言葉以外は浮かばなかった。
春麗が言った”なにもできない”の意味を痛いほど噛み締めながら、邵可は大きくため息をついた。
「それで…君はどうするんだい?」
「黎深叔父様とは具体的に何も話していないのですけれど、わたくしの好きなようにというようなことは言われましたわ。叔父様にはわたくしの考えなどとっくにお見通し。でも、決めていても迷いは生じるものです」
「それが私や紅家と道を違えても、か?」
「えぇ…たとえ紅家と道を違えても…わたくしは、黄鳳珠の妻なのですから。どこまで…許されるかわかりませんが、あの方がわたくしを必要として、許してくださる限り、ついていくのみです」
邵可は春麗を見た。
強い意志を瞳に宿しているのを見て、もはや何も言えないことを察した。