白虹は黎明にきらめく−2
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「まぁ鳳珠様もご存知の通り、もともと吏部の仕事は大してしていなかったので構わないといえば構わないのですけど…」
翌日になって春麗は吏部尚書補佐解任について、鳳珠、柚梨とゆっくり話ができた。
「本当にアイツは何を考えているんだか…」
昨日も邸でだいぶ怒っていたが、一日経って改めて思うところが出てきたのか、再び鳳珠は怒気を含ませてため息をついた。
「怒らないであげてください。叔父様は、悠舜様のことを考えた上でのいまの状態だと思うのです…」
「だったら尚更!」
悠舜が絡むからこそ怒りの増した鳳珠に、柚梨と春麗は顔を見合わせて押し黙った。
戸部尚書室の中が重い空気になる。
春麗は黎深の気持ちも鳳珠の気持ちもわかるだけに、胸が苦しくなった。
(お二人は考え方が違う…のは前からわかってたわ)
自分の立ち位置を見失わないように、慎重に考えを巡らす。
盲目的になるつもりはないが、自分の中で鳳珠に寄り添いたいとは思っていた。
それでも、いざ気配が近づいてきている天下分け目の選択を迫られると、あらゆる可能性を考える。
黎深からは自分の選択で、と言われているし、鳳珠に寄り添うと決めていても、春麗にとっては鳳珠も黎深も人生において一番大切な人だからこそ。自分の選択が正しいのか迷いが生じて、ひっそりとため息をついた。
重い空気を打ち破るかのように、声がした。
「失礼します、吏部の碧珀明です。紅春麗いますか?」
「珀明さん、どうしたの?」
春麗はパタパタと戸部の入り口にむかうと、青い顔で珀明が立っていた。
「どうしたの?」
嫌な予感がしながら、震えた声で尋ねる。
「春麗……李侍郎が…御史台に投獄された…」
魂の抜けた顔で声を振り絞るかのように伝えた。
(ついに、きた…)
春麗は瞳を閉じて一拍おいてから瞬きした。
それを見越して昨日の朝一番で吏部尚書補佐を解任した黎深は、やはり天つ才だと再認識する。
故に、自分の取るべき行動と取りたい行動を考えて、春麗は大きくため息をついた。