白虹は黎明にきらめく−1
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それから程なくして、黎深は春麗を吏部尚書補佐から解任した。
除目の時期でもなかったので、少なからず衝撃が走る。
呼び出された吏部尚書室で、春麗は黎深に詰め寄った。
「黎深叔父様、叔父様はそれでいいのですか?わたくしは何か一つぐらい叔父様の役に立ちたいのですが?」
「春麗は…いてくれるだけでいい。もうこの先がわかっているだろう?どのような状況になっても、私と春麗の関係は変わらないし、私の春麗への思いは変わらない。私の愛する姪だ。」
「でもっ」
「これからは…春麗自身のことを考えて選択しなさい。たとえそれが私や…鳳珠の思いと異なったとしても、自分の道を選ぶように。紅家の意向と異なっても構わない。逆に黄家と違っても…おそらく鳳珠はわかってくれるだろう。いいか、必ず自分で選べ」
「黎深叔父様…」
言葉はきついが、黎深はいつになく柔らかい表情で春麗を見た。
氷の長官が唯一見せる優しい表情。
大好きな兄にも秀麗にも、妻である百合にもこの素直な愛情表現はできないのが紅黎深だ。
そういう意味でも、春麗は黎深にとって唯一無二の存在であり、お互いにそれをわかっている。
「本当は、鳳珠なんかより私につけ、と言いたいが…もうお前は決めてしまっているからね。今まで楽しかった。私のことが片付いたら、たまには邸にお茶をしにくるように」
ポロポロと涙を流す春麗に、「優しい子だね」と黎深は言って、子供の頃のようにそっと抱きしめてから、手巾で顔を拭ってやった。
泣いたまま出るわけにはいかないので、最後にお茶を淹れて黎深とゆっくり飲んだ後、顔が落ち着いた頃を見計らって吏部尚書室を出る。
手には、紅の鉄扇を持って。
”解任”された吏部尚書補佐へ、憐憫半分、冷やかし半分の視線が集中する。
「あなたが”解任”されるとはね」
楊修が話しかけてきた。
「あなたの査定通りです。わたくしは紅黎深が吏部尚書として仕事をするために補佐をしていた者。紅尚書が仕事をしなくなった今、役目を全うできているとは思いません。正当な措置だと思いますよ」
そして楊修の耳元で扇を広げて、他に聞こえないように囁く
「吏部の立て直しをお願いします。楊修殿。」