白虹は黎明にきらめく−1
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自室にも火鉢が用意されていて、しっかり暖められていた。
侍女たちはうっすら汗をかいているが、春麗の身体はまだ少し冷たかった。
「一体どういうことでしょう…」
瑞蘭は不思議がったが、寝台の中に温石を入れて暖めてあったらしく、「ひとまず横になってください」と言われて大人しく入る。
白湯を出してもらって飲みながら小さく息を吐き出した。
「大丈夫か?」
知らせが入った鳳珠が慌てて室に入ってきた。
小机に湯呑みを置き、「鳳珠様…」と震える声で春麗が手を伸ばす。
鳳珠が瑞蘭に頷いて見せると、さっと侍女たちは退室していった。
仮面を外して寝台に腰掛け、春麗を抱きしめる。
「何を、見た?」
「秀麗が…多分、縹家に囚われている…」
鳳珠は眉間に皺を寄せた
「どう、しよう…もっと、早く確認していれば…」
カタカタと震える春麗を抱きとめ、背中を撫でてあやす。
「そういえば、邵可殿が藍州に向かわれていると言っていたな、主上についているというから、どこかで会えるかもしれない」
「父様!」
春麗はパッと顔を上げて鳳珠を見た。
「大丈夫だ、私がついている。安心してみるがいい。良くないものを見てしまったとしても、私がいる」
安心させるように抱きしめて、手を握る。
「はい…鳳珠様…」
春麗は一度瞳を閉じて、再度開いた。
先程の男…やはり邵可が巫女のような女と対峙している。
何か…鏡のようなものを床に落とし、巫女の姿は光が散らばるように儚げに消えた。
それから、燕青が秀麗を抱えていて、邵可と珠翠と男が雨の中で話をしているように見える。
珠翠と男は邵可に背を向けて去っていった。
鳳珠は息もしないまま一点を見つめる春麗に不安になる。
たまに何かを見ていることはあったが、こんなに長いこと見ているのは初めてかもしれない。
ようやく少し温まっていたはずの春麗の身体がまた冷たくなっていく。
自然とグッと抱きしめる腕に力が入った。
それが合図だったのか、春麗の瞳が閉じて、再度開いた。
「春麗!!」
「ほ、じゅ、様…」
パチパチと瞬きをしてから、消え入りそうな声で春麗が答える。
そのままくたっと力が抜けて、鳳珠にもたれかかって意識を失った。
暖めてある寝台に寝かせて、掛け布をかける。
仮面をつけて室の外にいた瑞蘭を呼び、白湯の用意をさせてから
「湯浴みをしてくる間、悪いが見ていてくれ。この室は暑いから、瑞蘭も水は飲むように」
と言って、室を出た。