白虹は黎明にきらめく−1
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「皇毅、いつまでそこで見てるの?」
晏樹は春麗が送った視線の先に向かっていった。
「あのお姫様、一筋縄じゃ行かないね」
「だがあぁいう者は使える」
「そう?ボクはあのお嬢さんの方が可愛げがあっていいけどな」
「お前の意見は聞いていない。だが、御史台に引っ張る気もない。あれは仮に紅秀麗と同じ立場になって御史台が誘っても来ないだろう。それに、地位が上がり過ぎている」
「そうかな?副官あたり、どう?押せば意外といけるかもよ?」
適当に言っている晏樹に、はぁ、と皇毅はため息をついてから
「それにしても、お前の質問をかわしたな。紅黎深が知らないことをあの女が知っているとも思えないし、あれは本当に悠舜の出自については興味がないのかもしれないな」
「せっかくカマかけたのに、つまんな〜い」
晏樹は面白くなさそうに歩き出した。
皇毅は以前、”晏樹に関わるな”といったことを何とか忠実にやろうとしていた春麗がちょっとおかしくて、ほとんど表情を動かさず小さく笑ってから後を追った。
その顔を晏樹が見ていたら、なんと言っただろうか…
春麗は戸部に戻ってから、自分の机案に座って、バタッとうつ伏せになった。
「大丈夫か?具合が悪いのか?」
鳳珠が心配そうに声をかけてくる。
「大丈夫です…が、ちょっとそこで凌黄門侍郎に絡まれまして…葵皇毅長官が横で気配消して見てましたね…そんなわけで、ちょっと疲れました。お茶休憩時間じゃないけれど、一杯だけ飲ませて下さい。飲んだらすぐ仕事します」
「またか…最近よく絡まれるな。今日はなんだった?」
「悠舜様に黎深叔父様が”宰相位を降りろ”と言って、悠舜様が”降りない”と答えられて大喧嘩していた、と。その後、凌黄門侍郎が黎深叔父様に、”悠舜様の出自について”で喧嘩ふっかけたようです。知りたくないかとしつこく聞かれましたので、”官吏のわたくしにとっては尚書令の鄭悠舜様でしかない”って答えて離れましたわ」
小さく掛け声をかけて立ち上がり、お茶を淹れる。
「悠舜の出自、か…全て抹消されていて調べても出てこない」
「ようですね。昔、叔父様に聞いたらそう話してました」
「春麗は…”先”ではなくて”前”も見えるのか?」
「…仮にそうだとしても、抹消されている方のそれを見るのはあまり趣味のいいこととはいえませんわ。それに、凌黄門侍郎にはあえて言いませんでしたけれど、先程の答え…あれを正確にいうなら、悠舜様は、鳳珠様の大切なお友達。鳳珠様が悠舜様との関係をどうされるかでわたくしも自ずと決まってきます。それが、わたくしにとっての悠舜様ですわ」
(春麗は多分何か知っているな…)
鳳珠は思ったが、本人が言うところの”正確な答え”を聞いて、あえて何も言わなかった。