青嵐の月草−2
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残業をしている柚梨と春麗に断ってから、鳳珠は悠舜に会いに行った。
「悠舜、まだやっているのか?たまには早く帰って凜姫を安心させろ」
ため息をつきつつ、誰もいないのを確認して仮面を外しながら悠舜の前に立った。
「おや鳳珠、あなたも私のことを言っている場合じゃないでしょう?春麗姫が待っているんじゃないですか?」
「柚梨と残業だ。全く、人手が足りなさすぎる」
「黎深が増やしませんからねぇ…困ったことです」
あまり困っていなさそうな顔で、悠舜は筆を置いた。
「それで、どうしたんですか?」
「いや、悠舜が気になって…来ただけだ」
「ありがとう、あなたも心配してくれるんですね」
「…」
少し赤くなった鳳珠がふと横を向くと、尚書令室に不似合いな酒瓶があった。
「…も、ということは、飛翔がきたか?」
鳳珠の視線の先に気がついて、悠舜は答える。
「えぇ」
「前も言ったが…悠舜が心配だ。無理は…しないで欲しい」
「えぇ」
悠舜は誰より誠実で真面目な同期ー鳳珠が心から心配してくれていることは汲み取っている。
(でも、今の鳳珠に言っても、黄家の柵があるから飛翔のように答えはくれないでしょうね…)
悠舜は飛翔と”何を”話したか言わないし、鳳珠も聞かない。
互いに、そこに現時点では妥協点が見当たらないと気づいているからだろう。
柔らかく微笑んでいたら、扉が開いた。
「珍しい方がいらっしゃいましたね」
見れば、羽羽とリオウだった。
鳳珠はさっと背中を向けて、仮面をつけようとした。
「私はあなたの顔を知らないわけではないし、リオウ殿も大丈夫じゃ。」
「…鳳珠」
羽羽の発言を悠舜に促される形で、鳳珠はそのまま向き直る。
リオウは目を見張り、羽羽はしばらく見ていたがやがて小さく一つ頷いた。
「ほぅ…いい顔になられたの。紅春麗殿をよろしく頼むよ。櫂瑜もわしも彼女のことは気に入っておるからの。孤独に生きてきた娘じゃ、しっかり支えてやってほしい」
「もとより、そのつもりで」
軽く頭を下げた鳳珠に、顔を見て意味を理解したリオウが「そうか…」と呟いた。