青嵐の月草−2
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後宮に十三姫が入った、という話を聞き、柚梨と春麗は後宮に向かった。
勝手にウロウロするのも問題と、予定通り珠翠に案内役を頼んだ。
「珠翠…」
「また春麗様にお会いできてうれしいですわ」
春麗が言わんとしたことを察した珠翠は、つい先日会った時よりさらにやつれた様子だがにっこりと笑って応対する。
(警備が手薄すぎる…)
春麗は気になり、珠翠に尋ねた。
「十三姫の室のあたりも見ても大丈夫かしら?」
「許可をいただいていますから、ご案内しますわ」
流石に室の中には入らなかったが、だいたい周りを見て確認をする。
話していた声が聞こえたのか、パッと扉が開いて、十三姫が出てきた。
「えっ?秀くん…じゃなくて?」
「あら珠翠、お客さん?…って、あなた、もしかして楸瑛兄様が話していた武芸のできる女官吏さん、じゃない?」
その声に、奥からもう一人出てくる。
「春麗!それから景侍郎も…」
「あ、れ?秀くん…?」
事態を把握した珠翠が、こちらが十三姫で、こちらが秀麗様ですよ、と説明した。
「十三姫様、初めまして。こちらは戸部の景侍郎、わたくしは紅春麗ですわ。そして久しぶりね秀麗」
「どうしたの春麗?それに景侍郎まで!」
景侍郎に会えた秀麗は嬉しそうにニコニコして寄ってきた。
「あら、お知り合いなの?」
「私たち双子です。似てないみたいだけど…」
春麗はにっこり微笑んで答えた。
「兵部の警護の件で、少し後宮に用がありまして…でももう大体分かったから、大丈夫ですわ」
「お茶でもしていく?時間があればぜひあなたと立ち合いしてみたいの」
十三姫はきらりと目を光らせてから楽しそうに誘ってきた。
状況のわからない秀麗が咄嗟に飛びついてくる。
「え?どういうこと?春麗?」
「だめですよ、春麗ちゃん」
柚梨は以前”秀麗はできない”と言ったのを思い出したか、肝心の部分を抜いて抜いて会話を遮った。
「ごめんなさいね、全てお断りしているんです」
「そう…残念。気が向いたら声かけてね」
「そろそろ戻りましょうか」
柚梨の声に、春麗は少し迷ってから秀麗が景侍郎と話している隙に、こっそりと口をひらいた。
「十三姫様…この辺りだけでも、警備をもう少し手厚くしたほうがよろしいのではないでしょうか?」
「あら、さすができるだけあるわね。やっぱり気がついちゃった?まぁ私がいるから大丈夫よ」
「それならいいんですけれど…くれぐれもお気をつけて。では失礼いたします」
去っていく三人を見つめながら、秀麗は
「また春麗は何も言わずに行ってしまうのね…」
と小さく呟いた。
回廊を歩きながら、視線を感じて立ち止まる。
「春麗ちゃん?」
柚梨が心配そうに見つめてくるが、「後ほど」とだけ答えて足を運んだ。