青嵐の月草−1
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春麗は恒例の戸部の休憩時間にお茶を淹れて配った。
「柚梨様、本日、各州に州試の案内を出しました。紫州は夏になる前に実施されます」
「そうですか。玉蓮は受けると言っていました。親の欲目かもしれないですけれど、州試は受かってくれると思いますよ。仮に試験会場に鳳珠みたいな絶世の美人がいたとしても、玉蓮は鳳珠で慣れてますから見惚れる心配はないですしね」
「おい」
春麗はフフフと笑って、突っ込んできた鳳珠を見た。
「柚梨、次の公休日前に、玉蓮を連れて邸に来てくれないか?近日中に紫州州試の発表がされるだろうから、春麗が礼部なのでそのあとだと痛くもない腹を探られかねない」
「そうですね、わかりました。玉蓮も春麗ちゃんに会いたがっていたので、喜びます」
「あと、玉蓮の後見だが…」
「それはもう、鳳珠にお願いできますか?」
「いいのか?」
「他に、誰がいるんです?よろしくお願いします」
柚梨は頭を下げ、春麗は微笑んだ。
約束の日、玉蓮は一度迎えに帰った柚梨に連れられて、鳳珠の邸に来た。
「鳳珠様、この度は後見人をお引き受けくださって、ありがとうございます」
玉蓮がきちっと挨拶をしたのを見て、鳳珠は少し目を見開いて驚いた表情を見せたが、すぐに元に戻り「あぁ」と頷いた。
「玉蓮姫、試験頑張ってね。私達からの贈り物よ」
「春麗ちゃん!まだ受かってもいないのに?」
「えぇ。試験のお守り」
開けてもいい?という玉蓮に頷いて見せると、包みを開いて中身を出した。
見ると、名前が入っている筆だった。
「わぁ、名前が入ってる!試験の時に使いますね!」
嬉しそうに柚梨に見せる。
「ありがとうございます、鳳珠、春麗ちゃん」
「実は…私も鳳珠様にいただいたんです、適正試験の時に」
懐からその時の筆を出して見せた
「まだ持ってたのか?」
「当たり前じゃないですか。適正試験も会試もこの筆で。その後は以前は邸で使っていたんですけれど、最近は礼部で大事な仕事をする時に使っていますよ。先日の国試の改革案も上奏文はこの筆を使って書きましたわ。傷んでしまうから大事なときしか使わないんです」
にっこり笑って答える春麗に、鳳珠は照れが出てぽんぽんと頭を叩いて誤魔化した。
「あー、ほーじゅさま、デレデレてるー」
といつもの口調に戻った玉蓮にみんなが笑った。
「お食事にしましょうか」と別室へ促した春麗に、玉蓮が嬉しそうにちょこちょことついていった。