紅梅は緑風に乗って香る−3
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「紅春麗ー礼部侍郎、戸部尚書補佐、吏部尚書補佐。
礼部ー”礼部の仮面尚書”、国試・進士教育改革担当。侍郎になりたてで実力の程は未知数だが仕事ぶりは堅実。ただし指示の出し方がえげつなく礼部の戸部化が懸念される…ってお前、鳳珠みたいな仕事しているんじゃないか?」
「いやですわ。えげつないだなんて。少ししか依頼していませんのに」
「戸部ー”戸部の秘蔵っ子”、施政官、中央税制、茶州学舎担当、その他特命事項、雑用係も兼ねる。尚書と侍郎が過保護すぎるが冷静で俯瞰でき仕事は着実にこなす。戸部尚書の罵声に怯むことなく、古参戸部官との関係もよい。若手不足の戸部で次世代を担う役割を期待…確かに鳳珠も柚梨も過保護だな、よく見ている」
「まぁ、否定はできませんけど…で、吏部は?」
「自分で読め」
ぽいと投げられた書翰を受け取る。
「吏部ー”吏部の女神”、尚書室に籠るため仕事ぶりは不明だが吏部尚書に仕事をさせることのできる唯一無二の存在。尚書が変わらない限り尚書補佐は継続…なんですの、これ」
はぁ、と春麗はため息をついた。
「これって各部の覆面吏部官が書かれたものですよね?誰がやっているかわからないからなんとも言えませんけど、まともに書いてくださったのって戸部だけですわね?」
黎深は扇であおぎながら茶を飲んだ。
「まともかどうかはわからんが、概ねお前のは好意的だ」
「”お前のは”ということは、秀麗のは?」
がるる、と言いそうな顔をして黎深はまたぽいっと書翰を投げた。
”全然役立たず・甘すぎ・夢みがち・迂闊すぎ・人を信用しすぎ・全然中央官吏に向いてない・とっとと退官させろ・ついに最後まで何もしなかった・思った通り陸清雅に全部手柄をかっさわれた”
「これまた…」
(事実だ…)と春麗ががっくりとうなだれた。
「さすが、覆面吏部官ですね…痛いところ突かれていますわ」
再びため息をついたと同時に、扉が叩かれた。
「失礼します、と…紅官吏もいらしたんですね。あぁ、それをご覧になりましたか?まあもうお一人は御史台で甘さは抜けるんじゃないですか?もし生き残ることができれば。多少は使える可能性が出てきます。一人ではどうしようもない甘ちゃんで、陸清雅に叩き落とされてもむしろ当然な夢見がちな少女でしたが、榛蘇芳が傍にいれば、一縷の可能性はあります」
入ってきた楊修が容赦無く言い放った。
「榛蘇芳の、あのバカさと、妙な勘の鋭さと、歯に衣着せぬ真っ当な忠告は貴重ですよ。貴方の姪ともども、仇敵の御史台にとられましたけど」
(秀麗は御史台ね…ますます距離が開くことになるわ)
遠くを見ながら口を挟まずにいる春麗を、黎深はチラリとみてパチン、と扇を鳴らした。
「とはいえ、紅秀麗もあの”官吏殺し”の陸清雅に叩き落とされてもまだ官吏を続けると決めた根性と気概は評価します。実はそこまでとは思っていませんでした。しかも入る省庁が御史台。貴族派官吏の二大巣窟の一つに、国試出身・女・紅姓と三拍子揃って、それでまあ葵皇毅に潰されなかったらー大したものですよ」
楊修はチラリと春麗を見る
「ま、可能性は限りなく低いですが…春麗官吏と一緒で、あの娘も一応貴方の姪なんですよね。貴方と百万分の一も血が繋がっているなら、またちょっと可能性は上がるかもしれません」
春麗はクスクスと笑った
「意外と…楊修さんが思われているより、可能性があるかもしれませんよ?紅尚書は面白くないでしょうけれど…わたくしは他人から見たらまどろっこしい、秀麗らしいやり方で、葵長官に刃向かいながらやっていくと思いますわ」
そんな話をしていると、絳攸初め、吏部の最精鋭たちが入室した。
楊修はニヤッと笑った。ーはじまる。
扉が閉まる。絳攸が黎深の代わりに、号令をかけた。
「ーはじめる。大掃除だ。片っ端から首を切っていけ」
春麗は選別されたものー残った方も切った方も再度目を通して、黎深に頷いて見せた。