紅梅は緑風に乗って香る−3
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お茶を淹れて、長椅子に座った鳳珠に出す。
トントン、と鳳珠の隣を叩かれたので、隣に腰かけた。
「先程の鳳珠様の問いですが…かなり大きな計画が描かれていると思うんです」
「大きな計画?」
「えぇ…同期の珀明さんから聞いたんですけれど、この前の贋金事件の時に、並行して碧幽谷殿の贋作事件があったの、鳳珠様はご存知ですか?」
「いや、知らん。だが碧幽谷の贋作が描けるような腕を持っている者は、そうそういないと思うが?」
「えぇ、”よほどの目利き”じゃないと看破られない贋作だったようです。おそらく、作品の数からして贋作の方が先に出回り始めたのでしょう。それから贋金。作るために鋳造用に銅が必要になりますよね。そこで銅の値段も上がっていく、と…」
鳳珠は茶を一口飲んだ。
「塩の値段の上がり方は、春麗がまとめてくれたように僅かずつ、だったな。全商連がまとめたという銅はもう少しあからさまに上がっていた。だが、塩については上がったり下がったりしながらも高止まりだ。これが繋がっているとすると、本命は塩だな」
チッ、と小さく舌打ちする。
「贋金の方は、見た目も華やかですからね、隠れ蓑にされたのでしょう」
「銅は落ち着いてきているみたいだな、贋金はバレるが塩は本物で絶対に稼げる商品だからな…そこで稼いだ金を何に使うか…」
春麗は、膝の上に乗せていた手をキュッと握った。
「まだ何か、よくないことを考えているな…春麗はいつもそう言う時は手を握りしめている。私の春麗の綺麗な手を傷つけてはいけない」
そっと鳳珠が手を取り、指を絡める。
春麗は嬉しさと恥ずかしさを混ぜたような、少し困った顔をして鳳珠を見つめた。
「それで?続きがあるんだろう?」
促されて、口を開く。
「…碧官吏がいらっしゃるときに、宰相会議で旺門下侍中からの案があった、っておっしゃってましたよね?」
「塩・鉄・茶の専任官吏か…そこで金を稼いで何をするか…まさか!!」
鳳珠は、近頃、黄家ー実家も含めて商売関係の文にそれらしい兆しがあったか必死で思い出したが、すぐに浮かばなかった。
だが、”戦商人”である黄家が絡むようになった時には、手を打つにはすでに遅い。
「…何も、証拠はありません。誰が、というのも。取り越し苦労かもしれませんが…」
「いや、塩と茶で庶民の生活からお金を吸い上げて、鉄に回すことができてしまう…ふぅ、悠舜に言われた時ははそこまで思いつかなかったが、即答で引き受けておいてよかったな…」
ふう、と大きく息をついて、背もたれにどさっと寄り掛かり茶を飲んで落ち着く。
春麗の手を握る力が少し強くなっていたことに気づいて
「すまない、つい力が入った、痛くなかったか?」
と一度指を解く。