紅梅は緑風に乗って香る−3
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”危ないから送る”と言うリオウが戸部までついてきた。
「まだ正式にお披露目していないのに、定刻前にウロウロしてしまって平気なのですか?」
「お披露目、って…まぁ大丈夫だろう、何か咎められたら、王のところに呼ばれたと言うから問題ない」
そう、とうなづきながら歩く。
不思議なことに誰にも会わなかった。
「だいたいあそこか…府庫にいる。一寸じぃさんに聞くほどじゃない内容であれば答えられると思うから、用があれば顔を出してくれ」
「一寸…わ、わかりましたわ。お送り、ありがとうございました」
笑いを堪えてなんとか戸部の前で答えていたら、「出ていたのか?」と声をかけられた。
見ると、黎深と鳳珠が連れ立って歩いてきた。
「はい…うー様のところまで…こちらのリオウ殿に送っていただきました」
黎深の顔色がさっと変わる。
「叔父様…?」
「ふぅん…そういうことか。じゃ、またな」
リオウは鳳珠をチラッと見てそのまま去った。
「で、今の子供…リオウと言ったか?あれは何者だ?」
鳳珠が不機嫌そうに聞く。
お話は中で、と促して戸部へ入った。
お茶を淹れながら先程の問いに答える。
「まだ王にも発表されていないようなんですけれど、羽羽様のところに来られる方です」
「やはり縹家か」
「羽羽様からはわたくしはもう大丈夫と言われましたわ」
「それは…巫女の件だろう。だがあの子供が来たと言うことは…」
黎深が苛立たしげに扇をパチパチやりながら何やら考え込んでいる。
(なんでもすぐわかる叔父様が珍しい…)
春麗は少し不思議そうに様子を見ながらお茶を配った。
「それで、お前は何をしに行っていたんだ?」
「少し、今起こっていることと今後のことについて伺ってきたんです。先程、碧官吏が黄尚書にお渡しくださったあの資料が気になって。でも中身について聞いたわけではありません。」
「で?」
「お金と人事に気をつけるように、と。政事としてですね。主上へも同じようなことを言っているみたいです」
「フン」
黎深は鼻息荒くため息をついてから、パチンと扇を鳴らした。
「悠舜は大丈夫だろうか?」
「あいつがあのハナタレ王を制御するぐらい簡単だ、それに何も話してはいるまい」
「春麗、休憩の茶を配るついでに、碧遜史を呼んできてくれ。先程の話の続きを報告したい」
呼ばれた碧官吏は、紅吏部尚書がいるのを見て少し目を見開いたが、そのまま何も言わずに促された通り腰かけた。
柚梨が尚書室の扉を閉める。
「それで、座ってまで聞く話とは?」
「少し前の宰相会議で、旺門下侍中から、塩・鉄・茶について専任の官吏を儲ける、という案が出ている。税収上は重要だが、専横の可能性があるため、先程の資料とともに戸部の従来の官吏で対応可能と尚書令にはっきり言い切ってきた。ただし、今の塩の価格上昇についてのカラクリが見えて止められれば、の話だが…」
「御史台あたりが動いているかの?」
「全商連でも動いているだろうな、これ以外に銅の価格もおかしいらしい。ということで、これらについては、今後は碧遜史と紅春麗で通常業務として当たってくれ。今回の件が落ち着けば大きく動くことはないと思うが、まとめて分析してから、定期的に報告をするように」
鳳珠が先程の資料を二人の前に出す。
「わかりました。よろしくな、嬢ちゃん」
「はい。数字の方はわたくしまとめておきますので、2週おきぐらいでご報告しますわ」