紅梅は緑風に乗って香る−2
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「はい、ありがとう、ではね」
百官の長である悠舜への礼を取らずに行こうとした二人を、黎深は呼び止めた
「ーー待て。悠舜への礼はどうした」
「…尚書令殿か。お前たちの服の裾に隠れていたのに気づかなかったな。だいたい、自身で言うべきだろう。まるで姫君のような扱いだな」
そのまま進みさる皇毅とは違い、晏樹は略式で礼を取った。
「何も言わなければ私もこのまま行くつもりだったのだけれど。皇毅のいう通り、今度から自分でね。お姫様のように守られていてはいけないよ」
ひらりと軽く手を振ると、晏樹も軽い足取りでその場を後にした。
「今のはお前が悪い。悠舜が言う前にお前が言うからあんなことを言われるんだ」
「何?この私に説教して礼をさせておきながら、悠舜を素通りしようとしたんだぞ!」
「お前には忍耐という言葉がだなー」
ぎゃーぎゃー言い合う二人の間には、悠舜が口を挟む隙もない。
合間を見計らい、昔と同じように杖を打った。
「はい、そこまでです。黎深、国試出身と資陰出身の任官割合はどれほどですか?」
「…一時期国試派に押され気味だったが、最近は半々の割合が何年も続いている」
「わかりました。はい、そろそろいきましょうか、二人とも。そうそう」
悠舜は優しい目で落ち込み気味の二人の友人を振り返った。
「さっきはありがとう。あなたたち二人にお姫様のように守られるのも、嫌いではありませんからね。何を言われてもそれに関しては気にしません。」
回廊を悠舜の歩調にゆっくりと合わせて歩きながら、鳳珠は友人にそっと頼んだ
「…悠舜、呼べば行く。あまりウロウロ出歩かないでくれ」
「いいえ。歩けるときにあるかないと、どんどん歩けなくなってしまいますから。それに歩くと考えがまとまりますし、自分の目で色々見た方が発見もありますから」
「…っ。…では、頼むから、誰か護衛をつけてくれ」
「…悠舜」
「はい?」
「…わ、悪、かった。余計なことを言った…かもしれない。…でも余計なことだとは実は思っていないし、また言うかもしれない…というか絶対言う自信がある」
「わかってますから、大丈夫ですよ。二人とも、庇ってくれてありがとう」
ニコッと笑っていた悠舜は、尚書令の顔で顔を上げた。
「黎深、鳳珠。吏部と戸部を任せます。今回の件で何が起こってもけっして揺らがぬよう、しっかり手綱を握っていてください」