紅梅は緑風に乗って香る−2
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お茶休憩の時間に、尚書室で鳳珠と柚梨に話しかける。
「最近、御史台が探りに来ているみたいなんです」
「えっ?」
柚梨が心配そうに声をあげる。
「ここ2日ほど、朝の珀明さんとの出仕時に妙な気配を感じていて。紅家の影とも違うし、攻撃してくる感じがしなかったので放っておいたんですけれど…」
パクリ、と今日のおやつの焼き菓子を口に入れる。
「なぜすぐに言わない?」
不機嫌そうな鳳珠の問いに直接答えずに、話を続ける。
「先ほど、わたくしが礼部から戻ってきたときに、柚梨様と戸部の前でお会いしましたよね?あのときにすれ違った官吏が、朝の人と同じ気配だったのです。佩玉の確認はしませんでしたが、歳のころと銀の腕輪から、陸御史ではないかと…黎深叔父様から、御史の中で長官以外では彼が最も要注意、と言われていたので覚えていて、特徴からすぐにわかりましたわ」
「陸家の生き残りか…」
「官吏殺しと噂の方ですよね?去年ならいざ知らず、なぜ今頃春麗ちゃんを嗅ぎまわっているのか…」
柚梨は少し考える。
「秀くんが冗官でいることと関わっていませんかね?」
「だとすると、冗官の一斉退官に絡めて貴族派が何か企んでいる可能性があるが…こちらは探られて痛い腹はない、堂々としていろ」
「そうですね…あまりしつこいようでしたら、またご相談しますわ」
「それにしても、厄介ごとが次々起こるな…」
鳳珠は遠い目をしてから茶を飲んでため息をついた。
「…悠舜、ふらふら一人でほっつき歩くな」
「…危ないから考え事をしながら歩かないでくれ。その癖、まだ直っていないのか」
いきなり年下二人の友人に説教を食らった悠舜は、キョトンと二人を見比べた。
なぜ会いに行こうとした二人が揃って目の前に出現しているのか。
「別に迎えにきたワケじゃない。たまたまだ」
「そう、たまたまだ」
「ふふ、たまたま一緒に歩くようになるなんて、仲良くなりましたね、二人とも」
吏部・戸部両尚書が揃っているという恐怖の光景に怯むことなくまっすぐ歩いてくる二人の男。
年はともに三人より少し上の三十代後半、一人は冬のように冷ややかで硬質な雰囲気を纏い、もう一人はゆったりと華のある雰囲気で、三人を見て口元をくすりと緩めた。
瞬時に、その場に冷たい火花が散るような緊張感が満ちる。
すれ違うまでに近づいたとき、皇毅が色素の薄い氷河のような目を、二人の尚書に向けた
「ーー生意気がすぎるな、官位が上の者に対する、礼の仕方も忘れたか?」
「皇毅、ほどほどに。君は口を開くと言いすぎるから」
つい、と晏樹が割って入った。
「でもね、私も皇毅も、君たちより官位が高いのは事実だから、礼、してくれるかな。別に何も減らないだろう?鄭尚書令も、君臣の礼を明らかにするように、って言ってたしね」
悠舜を引き合いに出され、黎深と鳳珠は無言で道を譲り、略礼をとる